国際情報

北朝鮮が必死に隠す「りんご問題」 金正恩実母は在日朝鮮人

 金正日の急死によって息子・正恩の偶像化作業が急ピッチで行なわれている北朝鮮。そんな中、北朝鮮が金正恩について必死に隠そうとしている情報がある。北朝鮮事情に詳しい関西大学経済学部教授の李英和氏が報告する。

 * * *
 金正恩の称号は「大将同志」から「領導者」「最高指導者」へと矢継ぎ早に格上げされてきた。4月15日の「太陽節」(金日成の誕生日)前後には国防委員長と党総書記に登り詰めるだろう。

 この超速での繰り上げ達成には、避けて通れない関門が待ち受ける。金正恩の生母にまつわる「りんご問題」の処理である。

 北朝鮮は事実上の身分社会だ。国民は「3階層52部類」の複雑怪奇な出身成分表で管理される。「3階層」とは上から順に「核心階層」(25%)、「動揺階層」(25%)、「敵対階層」(50%)となる。

 庶民はこれを隠語で「トマト」(皮も実も赤い)、「りんご」(皮は赤いが実は白い)、「梨」(皮も実も白い)と呼ぶ。

 金正恩の実母は在日朝鮮人の高英姫だ。その在日朝鮮人帰国者は「りんご」か「梨」のどちらかに分類され、徹底した差別と抑圧の対象とされてきた。

 したがって、金正日と高英姫の「結婚」は最高幹部の間で公然の秘密だったが、高英姫の出身成分(りんご問題)は禁忌事項とされてきた。

 だが、金正恩の偶像化作業には、生母の偶像化がどうしても不可欠だ。正直に出自を明かすか、それとも隠蔽して出自を捏造するか。労働党は「りんご問題」の処理をめぐって苦悶を重ねてきた。

 両方の可能性をにらんで昨年5月には元山農業大学構内に「尊敬する金正恩同志」の記念碑が作られたりもした。元山港は高英姫が乗った帰国船の寄港地で、元山市を金正恩の「第2の故郷」と定める可能性に備える作業だった。

 ところが、偶像化作業が再起動した段階で金正日が急死した。金正恩は経験と実績を欠く。「革命の血統」だけが金正恩の正統性を担保する。そこに出自の疑問が付け加われば、小さな傷でも致命傷になりかねない。「りんご問題」は敏感な政治問題に浮上した。

 そこで労働党は金正日急死の直後、間髪を入れずに「りんご問題」の処理方針を決めた。高英姫の出自をこれまで通りに「最高機密事項」として扱い、これを破った者は「厳罰に処する」と秘密裏に決定したのである。

※SAPIO2012年2月22日号

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン