ライフ

季節の変わり目に風邪を引きやすいのは自律神経不安定だから

 季節の変わり目に風邪を引きやすい、肩こりがひどい、ED(勃起不全)気味で元気がない……。こうした身体の不調から、後述するような生死に関わる病気に至るまで、健康にはすべて自律神経が関係していることがわかってきた。

「自律神経」とはよく耳にする言葉だが、いったいどんな働きをしているものなのか。改めて説明しておこう。

 神経には、脳と脊髄にある「中枢神経」と、中枢神経から枝分かれして、全身に張りめぐらされている「末梢神経」がある。

 末梢神経はさらに「体性神経」と「自律神経」に分かれていて、このうち「体性神経」は運動や知覚に関わるもの。例えば手足を動かそうとする時に働くのが体性神経だ。

 一方、自律神経は内臓や血管に関わる神経で、意識的にコントロールできないのが特徴だ。例えば意識しなくても全身に血液が送られ、内臓が働き、無意識のうちに呼吸が行なわれているのも、すべて自律神経の働きによるものなのである。

 自律神経にはさらに「交感神経」と「副交感神経」があり、このふたつが私たちの身体の中で、体温や脈拍、血流を微調整しながら、環境の変化に順応できるように働いている。

 青山・まだらめクリニック院長で、『免疫力を高める「副交感神経」健康法』の著書がある内科医・班目健夫氏は、交感神経と副交感神経の働きについてこう説明する。

「ふたつは相反する働きをしていて、自動車でいえば、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキのようなもの。いわば人間の健康は、このふたつを上手にコントロールすることで保たれているといえます」(以下「 」内は班目氏)

 具体的にいえば、交感神経は体温を低下、血圧を上昇させ、心拍を速めるなどの働きがある。つまり心身が興奮するときに活発になり、1日のなかでは朝から日中にかけては、この交感神経が優位になっている。

 逆に副交感神経は体温を上昇、血圧を低下させ、心拍をゆるやかにし、血行をよくする。いわゆるリラックスした状態で、1日のうちでいえば、夕方から夜にかけて優位に働きやすい。夜ぐっすり眠れるのは、副交感神経が優位に働いていればこそなのだ。

 交感神経と副交感神経が働くバランスは、平均して1対1になるのが理想的だが、現代では自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になりやすい環境にあるという。

「日中のストレスが多く、テレビやインターネットなど、夜になっても興奮状態が続く生活習慣が増えている。そのため副交感神経の働きが弱くなっている人が非常に多いのです」

 いわば我々の生活は、アクセルを踏みっぱなしにし、ブレーキがきかない状態で車を走らせているようなものなのだ。

 これでは夜ぐっすり眠ることができず、翌日になっても身体の疲れが取れないのも当然だろう。

 さらに、自律神経のバランスは、季節によっても変化すると班目氏は続ける。

「冬が近づくと交感神経が優位になり、血圧を上げ、体温を下げることで寒さに備える。逆に夏に向かう時には副交感神経が優位になって血圧を下げ、体温を上げて暑さをかわす。季節の変わり目は、両者の切り替えの時期。そのため、自律神経の働きが不安定になり、周囲の天候や気温の変化に体が適応できず、風邪を引きやすくなるのです」

※週刊ポスト2012年6月29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界選手権でもロゴは削除中だった
《パワハラ・セクハラ問題》ポーラが新体操日本代表オフィシャルスポンサーの契約を解除、協会新体操部門前トップが悔恨「真摯に受け止めるべきだと感じた」
週刊ポスト
辞職勧告決議が可決された瀬野憲一・市長(写真/共同通信社)
守口市・瀬野憲一市長の“パワハラ人事問題”を市職員が実名告発 補助金疑惑を追及した市役所幹部が突然の異動で「明らかな報復人事」と危機感あらわ
週刊ポスト
当時の事件現場と野津英滉被告(左・時事通信フォト)
【宝塚ボーガン殺人事件】頭蓋骨の中でも比較的柔らかい側頭部を狙い、ボーガンの矢の命中率を調査 初公判で分かった被告のおぞましい計画
週刊ポスト
世界陸上の最終日に臨席された天皇皇后両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《雅子さまの優美な“かさね色目”コーデ》土砂降りのなか披露したライトグリーンの“親子リンクコーデ” 専門家が解説「江戸紫のスカーフとの日本伝統的な色合わせが秀逸」
NEWSポストセブン
田久保真紀市長が目論む「逆転戦略」は通用するのか(時事通信フォト)
《続く大混乱》不信任決議で市議会を解散した伊東市の田久保真紀市長 支援者が明かす逆転戦略「告発した市議などを虚偽告発等罪で逆に訴える」
週刊ポスト
古い自民党長老政治の再生産か(左から岸田文雄氏、林芳正氏、加藤勝信氏/時事通信フォト)
《自民党総裁選》小泉陣営に飛び交う「進次郞内閣」の閣僚・党役員人事リスト 岸田文雄氏が副総理兼外相、林芳正氏は財務相、官房長官は加藤勝信氏が“内閣の骨格”か
週刊ポスト
青ヶ島で生まれ育った佐々木加絵さん(本人提供)
「妊活して子どもをたくさん産みたい…」青ヶ島在住の新婚女性が語る“日本一人口が少ない村”での子育て、結婚、そして移住のリアル
NEWSポストセブン
祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《夫にピッタリ寄り添う元モー娘。の石黒彩》“スマホの顔認証も難しい”脳腫瘍の「LUNA SEA」真矢と「祭り」で見せた夫婦愛、実兄が激白「彩ちゃんからは家族写真が…」
NEWSポストセブン
高市早苗氏はどうなるのか(写真/EPA=時事)
自民党総裁選を優位に進める小泉進次郎氏、悩ましいのはライバル高市早苗氏の処遇 実権をもたない“名ばかり幹事長”に祭りあげる構想も
週刊ポスト
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
《目撃者が明かす一部始終》「後ろめたいことがある人の行動に見えた」前橋・女性市長の“ラブホ通い詰め”目撃談、市議会は「辞職勧告」「続投へのエール」で分断も
NEWSポストセブン
本誌記者の直撃に答える田中甲・市長
【ダミー出馬疑惑】田中甲・市川市長、選挙でライバル女性候補潰しのために“ダミー”の対立女性候補を“レンタル”で擁立した疑惑浮上 当の女性は「頼まれて出馬したのか」に「イエス」と回答
週刊ポスト
崖っぷちの同級生コンビ(左から坂本勇人、田中将大)
巨人・阿部監督を悩ませる田中将大&坂本勇人のベテラン同級生コンビ 士気に関わる“来季の年俸” OBは「チームの足かせになっているのは間違いない」
週刊ポスト