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「NPO=ボランティア団体」は誤解 金銭面の苦労を代表吐露

 今やその数は4万5000を超えるNPO法人(特定非営利活動法人)。年々増加し、身近になっては来ているが、意外にその「カネ」の話は知られていない。障害者に対する射精介助を行う非営利組織・ホワイトハンズの代表で、『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』(小学館101新書)を上梓したばかりの坂爪真吾氏がNPOの「誤解」と「実態」、「カネ」について解説する。

 * * *
 日本では、いまだに大多数の人が「NPO=ボランティア団体」と勘違いしていますが、両者は別物です。非営利組織の「非営利」とは、「お金を儲けてはいけない」「サービスを全て無償=ボランティアで提供しなければならない」という意味ではありません。あくまで、「売り上げから、組織の運営費・人件費等の諸経費を差し引いて残った利益を、(株式会社の配当のように)利害関係者の間で分配してはならない」という意味です。
 
 そのため、NPOとして有償のサービスを提供したり、商品を販売したり、経営者やスタッフに給与を支払うことは可能です。分かりやすく言えば、学校や病院、教会やお寺も、広義のNPOです。学校や病院がボランティアだけでは回らないように、NPOも、「組織を維持するために必要な資金を、きっちり集める(稼ぐ)こと」が求められます。
 
 NPOというと、「国や地方自治体からお金をもらえるんでしょ?」と聞かれることが多いです。実際、「助成金や補助金がもらえるみたいだから」という理由で、NPOを設立する人もたくさんいます。しかし、残念ですが、これは100%、勘違いです。
 
 NPOは、前例のないことをやるための組織ですが、そのNPOに出す助成金の審査をするのは、ガチガチの前例至上主義の役所や、その下請けである公益法人である、という大いなる矛盾があります。

 ホワイトハンズも、創業前~創業後に、応募可能な助成金や補助金には片っ端から応募しましたが、全て、一次審査で落選しました。「風俗に金は出せん」という理由で、ロクに審査もされずに、門前払いされたこともありました。

 連戦連敗を繰り返した結果、お金の問題を解決するためには、「最初から、ゼロコストで運営できるビジネスモデルを作る」ことが一番である、という身もフタもない結論に落ち着きました。

 事務所を持ち、スタッフを大勢雇い、著名人の理事を揃え、多くの助成金を獲得しているにもかかわらず、組織を回すことだけが自己目的化したり、行政の下請けに成り下がったりして、何の社会問題も解決できていないNPOは、世の中に腐るほどあります。事務所やスタッフ、助成金は、社会問題を解決するための「手段」であって、「目的」ではありません。NPOの目的は、あくまで「社会問題を解決すること」です。

※坂爪真吾/著『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』より

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