ライフ

「了解」は対人関係の非円滑用語 目上・上司にはなじまない

「了解しました」――会社で頻繁に耳にする言葉だが、実は、目上の人に使うにはふさわしくない言葉なのだという。われらタテ社会の「ひっかかる言葉」を、作家の山藤章一郎氏が考察する。

 * * *
 いまや、オフィスにも、メールにも、猫にも杓子にも「了解」がのし歩いている。メールで〈り〉と打てば〈了解〉と転じ、部下が上司に〈了解〉を連発する。

 上司「これ明日までに頼みます」

 部下「了解しました」

「りょうかい【了解 諒解】
 1:物事の意味・内容・事情などを理解すること。
 2:理解した上で承認すること。

 近年、目上の人の依頼、希望、命令などを承諾する意に使う向きもあるが、慣用になじまない。(ぶっきらぼうで敬意が不足)『分かりました』『承知しました』のほか『かしこまりました』『承りました』などを使いたい」

『明鏡国語辞典 第二版』(大修館書店)のただし書きである。

「ぶっきらぼうで敬意が不足」

 10年前の同じ辞典の第一版には、ない。二版にわざわざ挿入されている。

〈ポライトネス〉という理論がある。対人関係を円滑にするための〈社会的言語行動〉をいう。敬語などがとくに、円滑をみちびく。〈ポライトネス〉に依れば〈了解〉は、対人関係の非円滑用語となる。不快を、強く訴える人もいる。

「了解」「了解です」「了解しました」――これがなぜ、組織、会社、目上、上司に「なじまず」配慮に欠けるのか。

 日本語は、面倒くさくすれば敬意を高めるという性質を持つ。

〈拍〉が少ないと軽い侮りさえあたえかねない。「了解いたしました」といえば〈4拍〉になる。〈2拍〉の倍の敬意である。

 ところが、倍の敬意を表そうとしても〈了解〉は、「よろしい」と許可をあたえる時の大門部長刑事の使い方が本義である。

 それを部下が上司になり代わって使うと、「です」をつけようと「しました」を足そうと、オレを軽く見てるのか、と上司、先輩は思う。

 少し、詳しくいう。部下は上司から〈依頼〉〈命令〉をあたえられる。すると部下は、意味を考え、咀嚼し、理解=understandして、肯定して、声を発する。「了解」と。いわれた上司は思い屈する。「きみはな、理解しなくていい。私は、ヤレと命令してる。考えるヒマがあったら、すぐ実践せよ」

『家政婦のミタ』は記憶に新しい。崩壊寸前の阿須田家の家政婦・松嶋菜々子は、家族の者に命ぜられると口が裂けても「了解です」とはいわなかった。「承知しました」

※週刊ポスト2012年12月14日号

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト