視覚障害者を誘導する盲導犬が誕生して、もうすぐ200年になる。主宰するCan! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導する西川文二氏が、盲導犬になる犬の資質について解説する。
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私めその昔、盲導犬育成のボランティアをしてましてね。
盲導犬候補の子犬たちは、生後2か月齢から1歳程度までの間、一般のご家庭に預けられる。で、月に1~2回、育成団体の施設に来てもらって、家庭犬に必要なマナートレーニングや、人間社会の刺激に慣らす社会化トレーニングを受けてもらう。
実は、盲導犬の卵たちは、全員が盲導犬になれるわけではない。1歳からの本訓練を含めて子犬の頃から、資質を見極めつつふるいにかけられてく。結果、3割程度しか盲導犬っていうゴールにはたどり着けない。
現在、日本の盲導犬は約千頭。毎年130頭程度の盲導犬のニューフェースが誕生してるけど、盲導犬を必要としてる人たちは推定で約8千人弱いるっていわれてる。
希望者にいち早く盲導犬を提供するには、先の3割という確率をあげることが必要、ってわかっちゃいるけど、これが難しい。なにを隠そう、この3割って確率は世界的な平均でしてね。
ところがですな、帯広畜産大の鈴木宏志教授のチームがつい最近、盲導犬になった犬となれなかった犬の遺伝子配列のわずかな違いを解析して、先の確率を高める糸口を見つけ出した。
子犬の段階で遺伝子を調べれば、その犬が盲導犬になれるかが予想できるんだと。その的中率は現状5割、今年中には7割まで高めるっていう。将来は雄と雌の遺伝子を解析し交配することで、先の確率を格段に高めることができるらしい。なんともワンダフルなお話。
ところでゴールまで到達できない犬たちはどうなるの? まぁその心配には及びません。なんてったって生まれながらにしての、エリートの卵たち。盲導犬にはなれなくても、家庭犬としては申し分のない資質を、それも十二分に備えておりますからね。
※週刊ポスト2014年3月7日号