ライフ

くも膜下出血から生還した神足裕司氏のロボットスーツ体験記

ロボットスーツ「HAL」を装着した神足裕司氏

 2年半前、人気コラムニスト、神足裕司氏(56)は重度くも膜下出血に倒れた。命こそ救われたものの、左半身麻痺、高次脳機能障害といった後遺症が残り、今も会話はままならない。しかし、家族の介護を受けながら、徐々に執筆活動を再開。

 そんな神足氏の次の夢は、歩けるようになることだ。そこで神足氏が選んだのは、身体動作支援ロボットスーツ「HAL」(福祉用)だった。つくば市のサイバーダインスタジオで、15日間の集中トレーニング。以下〈 〉内は、神足氏が綴った体験記の一部だ。

〈久しぶりだった。HALは以前、取材をしたことがあった。まさか自分が必要な立場になるなんてその頃は思ってもみなかったのだけど、取材したときは、こんな『鉄腕アトム』の世界のものが世の中で本当に使われるようになるなんて、夢のまた夢のような気がまだしていた。

 筑波大学で研究されてきたロボットスーツ「HAL」は、2004年6月に設立されたサイバーダイン株式会社で研究・開発、製造、販売されている。そのサイバーダイン株式会社はこの春(3月26日)に東証マザーズに上場を果たした。日本でロボット医療機器メーカーが上場したことは、はじめてだという。

 ボクのように脚の機能が衰えた人の補助をするロボットスーツ「HAL」は、ドイツではHALによる治療が公的な労災保険での適用を受けていたり、EUではHALの治療効果が認められて医療機器として認証されていたり、日本よりも海外での認知度のほうが進んでいるのかもしれないが、とにかく勢いがあるのだ。

 実際、ボクがトレーニングを受けている間にも、連日、国内外を問わず、取材や官公庁、大学関係者の見学がひっきりなしにやってきた。トレーニング中のボクにも視線が投げてこられる。「あの人はどのくらい脚が不自由で、装着すると、どのくらい歩けるのだろうか?」──当たり前の好奇心の眼差しが注がれる。けれど、ボクはそれも悪い気はしないのだ。むしろ、誇らしくも思ったりする。この最先端のロボットを“装着”して、いま歩いているのだという自負がある。〉

 2011年9月3日、神足氏は重度くも膜下出血に倒れた。左脚がうまく動かないのは、脳の右側の運動中枢が損傷を受けたためだが、脳からは筋肉を動かす生体電位信号が正常に発信されている。HALはその微弱な信号を皮膚表面から検出、増幅してモーターを動かし、歩行をアシストする──この反復トレーニングを繰り返すことで、正しい脚の動きを脳が学習していくと考えられている。

〈自分が動けない、歩けないということがどういうことか、頭のなかで考えてみると、よくわからない。歩こうとすると、頭のなかも止まってしまうという感覚ともちょっと違う。

関連記事

トピックス

佳子さまの“着帽なし”の装いが物議を醸している(写真/共同通信社)
「マナーとして大丈夫なのか」と心配の声も…佳子さま“脱帽ファッション”に込められた「姉の眞子さんから受け継ぐ」日本の伝統文化への思い
週刊ポスト
「秋の園遊会」に出席された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《秋の園遊会》 赤色&花の飾りで“仲良し”コーデ 愛子さまは上品なきれいめスタイル、佳子さまはガーリーなデザイン
NEWSポストセブン
(写真/アフロ)
《155億円はどこに》ルーブル美術館強盗事件、侵入から逃走まで7分間の「驚きの手口」 盗まれた品は「二度と表世界には戻ってこない」、蒐集家が発注の可能性も 
女性セブン
真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
ミントグリーンのワンピースをお召しになった佳子さま(写真はブラジル訪問時。時事通信フォト)
《ふっくらした“ふんわり服”に》秋篠宮家・佳子さまが2度目の滋賀訪問で表現した“自分らしい胸元スッキリアレンジ”、スタイリストが解説
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン