ビジネス

視聴者不在の4K放送「普及進まなければガラパゴス化」の懸念

4K試験放送では谷村新司氏(右から2人目)出演のアリスライブも

 6月2日からいよいよ「4K」の試験放送が始まった。

 これまでどんなに大画面で高額な4K対応テレビを購入しても、放送されている現行番組(コンテンツ)を高精細な4K技術に“加工処理”していただけ。本物の高画質とはいえなかった。それが4Kカメラで撮影した専門番組が見られるようになることで、普及に大きな弾みがつくと期待されている。

 しかし、試験放送は視聴者不在の見切り発車となった感が否めない。というのも、4K放送を家庭で楽しむためには、試験放送を行っている「スカパーJSAT」のチャンネル(番号502)に合わせる必要があるため、CSアンテナの設置が必要になる。

 それだけならまだしも、4K放送を受信するための専用チューナーが要るのだが、チューナーを発売する電機メーカーはシャープとソニーの2社のみ。しかも、シャープ製の6月25日発売の製品が最短となり、ソニーに至っては秋になる見込みだ。つまり、個人ユーザーは完全に取り残されているのである。

 経営再建中のシャープが真っ先にチューナー販売に踏み切る「英断」を下したことは評価したいが、この体たらくでは誰のための試験放送なのか分からない。

 4Kテレビを大々的に売り出しているメーカーがこれほど及び腰なのはなぜか。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏が話す。

「サッカーW杯の中継に間に合うように、試験放送の規格や受信仕様を急ピッチで進めてきたために、チューナーの規格まで統一できていないのです。シャープが出すチューナーも内蔵ハードディスク(HD)の容量が少なく、外付けHDでは現行画質の録画しかできません。

 今後、ネットワーク経由でダビングする場合にどういうフォーマットで行えばいいのか、はたまた4Kブルーレイが登場して記録媒体で保存できるようになるのか……。それらの指針が何ら示されていないので、メーカーも様子を見ざるを得ないのです」

 試験放送では13日より開幕するW杯の日本戦の放映も検討されているものの、視聴できたとしてもパブリックビューイングなどを予定する街頭のみ。また、13時~19時の放送時間帯では中継は不可能なうえに、数日遅れでの再放送になる公算も大きいという。

 後手に回っているのはメーカーばかりではない。肝心のコンテンツを送信する放送局も決して一枚岩ではない。

「4Kでの撮影ができる放送機材は高額なうえに、しっかりした撮影技術を蓄積しないとブレてしまい編集にも手間がかかる。そうした設備投資やスタッフの労力を考えたら、無料放送でビジネス化できる保証はない」(民放キー局・技術担当役員)

 4Kの高画質を最大限に活かすためには、2016年に予定されている本放送が「有料チャンネル」にならなければ採算が取れないという。

関連記事

トピックス

田久保市長の”卒業勘違い発言”を覆した「記録」についての証言が得られた(右:本人SNSより)
【新証言】学歴詐称疑惑の田久保市長、大学取得単位は「卒業要件の半分以下」だった 百条委関係者も「“勘違い”できるような数字ではない」と複数証言
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン
“高市効果”で自民党の政党支持率は前月比10ポイント以上も急上昇した…(時事通信フォト)
世論の現状認識と乖離する大メディアの“高市ぎらい” 参政党躍進時を彷彿とさせる“叩けば叩くほど高市支持が強まる”現象、「批判もカラ回りしている」との指摘
週刊ポスト
国民民主党の玉木雄一郎代表、不倫密会が報じられた元グラビアアイドル(時事通信フォト・Instagramより)
《私生活の面は大丈夫なのか》玉木雄一郎氏、不倫密会の元グラビアアイドルがひっそりと活動再開 地元香川では“彼女がまた動き出した”と話題に
女性セブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
前伊藤市議が語る”最悪の結末”とは──
《伊東市長・学歴詐称問題》「登場人物がズレている」市議選立候補者が明かした伊東市情勢と“最悪シナリオ”「伊東市が迷宮入りする可能性も」
NEWSポストセブン
日本維新の会・西田薫衆院議員に持ち上がった収支報告書「虚偽記載」疑惑(時事通信フォト)
《追及スクープ》日本維新の会・西田薫衆院議員の収支報告書「虚偽記載」疑惑で“隠蔽工作”の新証言 支援者のもとに現金入りの封筒を持って現われ「持っておいてください」
週刊ポスト
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン