安福久美子容疑者(69)の高羽悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
1999年11月に名古屋市西区に住む主婦、高羽奈美子さん(当時32)が自宅で殺害された事件。逮捕された安福久美子容疑者(69)は奈美子さんの夫・悟さん(69)の高校時代の同級生だった。
事件発生5か月前に開かれた同窓会で悟さんと安福容疑者は久しぶりに再会したが、その同窓会で安福容疑者が幹事を務めていたことが、捜査関係者への取材で分かった。
いまだ謎の多いこの事件だが、特に不可解なのが「どのように高羽さんの自宅住所を知ったか」「何が犯行のきっかけになったか」の2点だ。
事件の取材を続けるノンフィクションライターの水谷竹秀氏がレポートする。
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「どうやって私の家を知り得たのか」と悟さんが首を傾げる通り、学生の時以来、悟さんと接点がなかった安福容疑者が、事件現場となった自宅住所を突き止めた方法については、悟さんにとって大きな謎のひとつだ。
悟さんは高校時代、安福容疑者から2年連続でバレンタインデーのチョコレートと手紙をもらい、大学生になっても言い寄られていた。しかし、「きっぱり断っていた」という。それから安福容疑者とは何の音沙汰もないまま、約20年後に同窓会で再会することになる。
同窓会が開かれたのは1999年6月。地元のうなぎ屋に、県立高校の軟式テニス部のOB・OG約20人が集まった。会を主催した幹事は2人とも女性で、そのうちの1人が安福容疑者だった。会の名簿に記載されていた住所は、事件現場となった悟さんの居住地ではなく、悟さんの実家だった。悟さんが語る。
「参加者の中で、住所が変わっている人がいたら新しい住所を書いてください、と幹事から言われていたら書いていますよね。そうしたら幹事である安福容疑者は私の居住地を知ることができる。でも新住所を書いたかどうかは、よく覚えていないんです」
会の名簿には悟さんの職場も記載されていた。仮に新住所を知らせていなかったとしても、安福容疑者は悟さんの職場から尾行し、自宅を突き止めたというパターンも考えられるだろうか。しかし高羽さんはこう続ける。
「当時、職場には車で通っていたので、職場からの尾行は考えにくい」
安福容疑者と一緒に幹事を務めたもう1人の女性は、自宅のインターフォン越しに言葉少なにこう語った。
「当時のことは覚えておりません。知っていることはすべて警察に話しました」
