芸能

『花子とアン』原作者が語る 花子は「愛情がエンジンの人」

村岡花子さんの孫で作家の恵理さんと翻訳家の美枝さん

 高視聴率が続いている『花子とアン』(NHK)。ドラマでは、L.M.モンゴメリの小説『赤毛のアン』の翻訳で知られる村岡花子さんが女学校で英語を学び、翻訳家になるまでの半生が描かれるが、その原案『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』(新潮文庫)を手がけたのが、花子さんの孫で作家の村岡恵理さん(写真左。写真右は姉で翻訳家の美枝さん)。花子さんの素顔について聞いた。(文中敬称略)

 明治の世に生まれ、戦争を生き抜いた花子の人生は、苦労や挫折の連続だった。

 結婚後、わずか5才の長男・道雄を疫痢で亡くし、関東大震災の影響で夫の会社が倒産し多額の負債を負った。それにもめげず、戦時中に命がけで『赤毛のアン』の原書『アン・オブ・グリン・ゲイブルス』を訳した。女性の自立が難しい時代、花子は仕事に情熱を注いだ。

「愛情を注ぐ対象が、祖母のモチベーションとなっていました。長男を失った後、失意でいったんはペンを折りかけながらも、日本中の子供たちのためにと再起したのです。まさに、愛情がエンジンとなったかのような女性でした」

 花子は長男を亡くした後、妹の娘(花子からみて姪)を養女とした。養女・みどりに注ぐ愛情は格別で、それが文筆家として大成する原動力となった。母として娘に何を読ませたいかを強く感じて作品を選び、娘を通して社会に本を送り届けようとした。恵理さんがこんなエピソードを話してくれた。

「『赤毛のアン』というタイトルは、実は印刷直前まで『窓辺に倚(よ)る少女』でした。そのタイトルに決まったその晩、出版社の社長から電話が突然入り、『赤毛のアン』への変更を提案されたそうです。『窓辺に~』を気に入っていた祖母は当初、“絶対にいやです”とはっきり断りました。ところが、“断然『赤毛のアン』がいいわよ。『窓辺に倚る少女』なんておかしくって”と娘から言われるや、ハッとしてすぐさま社長に電話を入れ、『赤毛のアン』を推したのです」

 娘・みどりは当時、青山学院大学の学生だった。その世代の女性にこそ同書を読んでほしいと願っていた花子は、娘の若い感性を何よりも信じたのだ。

「祖母は厳しい現実を切り開いていく強さを持つ一方で、ロマンティックな女性でした。また、明るくさっぱりした面もありました。 亡くなった母は生前、“あの時は勘で『赤毛のアン』がいいわよってお母さんに楯ついたんだけど、もしあの時変わっていなかったら今頃どうなっていたのかしら”ってよく笑っていましたね」

『赤毛のアン』のタイトル決定にこんな裏側があったとは、興味深い事実だ。

※女性セブン2014年7月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
米国の大手法律事務所に勤務する小室圭氏
【突然の変節】小室圭さん、これまで拒んでいた記念撮影を「OKだよ」 日本人コミュニティーと距離を縮め始めた理由
女性セブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
現役を引退した宇野昌磨、今年1月に現役引退した本田真凜(時事通信フォト)
《電撃引退のフィギュア宇野昌磨》本田真凜との結婚より優先した「2年後の人生設計」設立した個人事務所が定めた意外な方針
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
中森明菜復活までの軌跡を辿る
【復活までの2392日】中森明菜の初代音楽ディレクターが語る『少女A』誕生秘話「彼女の歌で背筋に電流が走るのを感じた」
週刊ポスト
世紀の婚約発表会見は東京プリンスホテルで行われた
山口百恵さんが結婚時に意見を求めた“思い出の神社”が売りに出されていた、コロナ禍で参拝客激減 アン・ルイスの紹介でキャンディーズも解散前に相談
女性セブン
真美子夫人は「エリー・タハリ」のスーツを着用
大谷翔平、チャリティーイベントでのファッションが物議 オーバーサイズのスーツ着用で評価は散々、“ダサい”イメージ定着の危機
女性セブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン