「自分へのご褒美」としてエステを楽しむ女性が多い一方で、エステティシャンの労働環境は「新3K(きつい・帰れない・給料が安い)」と呼ばれるほどに過酷だという。さらに、エステティシャンには重いノルマがのし掛かり、達成できないと休みがなくなるなどのペナルティーが課せられるケースもあるというのだ。
ノルマがきつければ、その矛先が強引な勧誘となって客に向かうのは必然かもしれない。事実、国民生活センターにはエステサロンにまつわる相談が相次ぎ、2013年の1年間だけでも8439件にのぼる。
例えばこんなケースがある。体験コースを受けた後、しつこく勧誘され、24万円で10回分のクーポンを購入。10回目の施術を受けて帰ろうとすると、次回の予約日を聞かれた。「今日で終わりのはず」と言ったが、勝手に新たに10回コースの手続きがされていて、29万円の現金を支払わされたという。
そして、地方都市に住むOさん(52才・主婦・仮名)は、エステサロンの罠にはまってしまった。
「フェイシャルエステのお試しコースで行ったら、施術が終わった後にワキの脱毛を紹介されました。『今なら初回1000円ですよ』と言うので、安いしモノは試しと思ってお願いしたのです。右側をやってもらってとてもキレイになったので、“じゃあ左も…”と言うと、『では追加で5000円になります』と。おかしいな、と思い担当者に聞くと、『両ワキで1000円とご説明したわけではありません。あくまで初回料金の対象は右側だけです』の一点張り。
これ以上何を言っても無駄だと諦めて、右側だけでいいと伝えると今度は『片方だけなんて恥ずかしいですよ』、『両方やっておけば一生ラクできますよ』と帰してくれないんです。結局、追加で5000円払って左側もやってもらいましたが、あれは強迫というより脅迫でしたね」
Oさん以上に苦い経験をした人は大勢いるはずだ。元エステティシャンのSさんは多額のローンを利用客に組んでもらう誘い文句を明かす。
「とにかく、お客さんには何も言わせずに押し切ってしまうこと。勧めるという生ぬるいやり方では契約してもらえない。例えば若い子なら『あなたはまだ若いのに、今のそんな肌の状態はまずいです』とか。年配のかたなら『これまでのケアではしわやたるみは防げません』などと断言する。それでもダメだったら、上のクラスの店員も出てきて最終的には3人以上の店員で、お客さんを取り囲んで説得することもありました」
Sさんは、当時の客に対して今でも申し訳ない気持ちになると打ち明ける。
「お金がないと言っている人にもローンを組ませます。100万円のコースを月5000~6000円で15年払いとか。私はそんなことやりたくなかった。でもできなければ“どれだけウチが広告費にお金を使ってると思ってるんだ?”と怒鳴られる。
その言葉の暴力がつらかったです。月200万~300万円のノルマがあって、達成できないと翌日から降格になり、研修目的で休みがなくなりました。そして研修では“どうやってお客に契約させるか”を徹底的に指導されるんです」
※女性セブン2015年1月8・15日号