日経平均株価は年初から右肩上がりで、3月末の決算期までに2万円の大台をうかがう展開となった。
「どんなに閣僚スキャンダルが出ても株価が高ければ支持率が大きく下がる心配はない」(自民党政調幹部)
と、いまや株価は安倍政権の“支持率安定装置”となっているが、市場のプロは最近の株価の動きは「破綻前夜」と感じている。投資顧問会社マーケットバンク代表の岡山憲史氏が語る。
「日本株の値動きにはいくつかのセオリーがありました。たとえば、前日に米国の株価が上がれば日本も上がり、米国が下がれば日本も下がるという“米国連動株価”だという特徴や、円安なら輸出企業にプラスだから買い(上昇)、円高は売り(下落)と為替が株価に与える影響がはっきりしていた。ところが、最近はセオリーが通用しない。米国の株価が下がっても、為替が円高に振れても、一本調子の株価上昇なのは説明がつかない」
もちろん日本企業が好調だから、ではない。市場関係者の間では、原因は“クジラが暴れているからだ”と見られている。
「クジラ」とは、約137兆円もの国民の年金資金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)の異名だ。世界最大級の政府系ファンドであることからそう呼ばれる。
国民の老後を支える虎の子を預かるGPIFは国債を中心に運用することになっていたが、安倍政権は昨年10月末、運用資産のうち国債保有を減らし、国内株の比率を全体の12%から25%まで大幅に増やす方針を決めた。ざっと18兆円分が新たに株式市場に流れ込む計算になる。そうした政府方針を受けて「クジラ」が日本株を買い漁っているから市場のセオリーが崩れているのである。