国際情報

日中関係について大前研一氏「今日の問題の根源は田中角栄」

 中国の李克強首相は、中国の国会にあたる全人代閉幕後の会見でこう言い放った。 「一国の指導者にとって、先人の業績を引き継ぐだけでなく、先人の罪な行いがもたらした歴史の責任も負わなければならない」「安倍談話」への牽制である。戦後70年を踏まえ、安倍晋三首相が今夏に発表する談話の検討が始まり、各国が動向を注視している。とくに中国、そして韓国の反発は必至である。国内でも発表を危ぶむ声が絶えない安倍談話に、果たして「正解」はあるのか。大前研一氏が解説する。

 * * *
 中国は、かつてはモンゴル帝国や満州族に侵略され、イギリスとのアヘン戦争では賠償金の支払い、香港の割譲、上海、広州、福州、厦門、寧波の開港などを余儀なくされた。度重なる侵略の過去があるにもかかわらず、なぜ日本との関係だけがここまでこじれてしまったのか。その根源を考えることは、すなわち共産党が支配する中国、そして戦後日本の対中外交を見直すことと同義である。

 直接的な契機は1972年の日中国交正常化だ。当時の田中角栄首相と周恩来首相が会談して国交正常化を決めたわけだが、その入り口の段階でボタンの掛け違いがあった。日中関係の歴史を(たぶん)深く知らなかった田中角栄が、それを知り尽くしていた周恩来にしてやられたのである。

 田中角栄には過去の清算ができなかった。彼に十分な歴史的知識があれば、交渉の前段でこう言うべきだった。

 日本は好き好んで中国に足を踏み入れたわけではない。日本で明治維新が起こるのと前後して、中国ではすでに英国をはじめとする欧米の侵略が始まっていた。そうした列強の魔手から逃れるには、自ら海を渡って中国の権益を得て欧米と伍する地力をつけていくしかなかったと。

 しかし田中角栄は、そうした歴史経緯を省き、ニクソン米大統領による頭越しの米中接近(ニクソン・ショック)に焦るあまり、実利を重んじた解決を急いでしまった。

 日本に対する戦後賠償の請求を放棄する代わりに、日本からODA(政府開発援助)で巨額の経済援助資金と技術を引き出すことを目的とした周恩来の提案を「ヨッシャ、ヨッシャ」で安易に呑んでしまう。これは外務省に文書が残っていないため“口承伝説”になっているが、そこに今日の問題の根源がある。

 つまり、戦後のスタート地点で互いの歴史認識を調整する努力をしないまま問題を解決しようとしたから、ややこしくなってしまったのだ。

※SAPIO2015年5月号

トピックス

各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
理論派として評価されていた桑田真澄二軍監督
《巨人・桑田真澄二軍監督“追放”のなぜ》阿部監督ラストイヤーに“次期監督候補”が退団する「複雑なチーム内力学」 ポスト阿部候補は原辰徳氏、高橋由伸氏、松井秀喜氏の3人に絞られる
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン