芸能

光石研、新井浩文、吉祥寺 ドラマで役者やロケ地カブリすぎ

 各局がしのぎを削るドラマゆえに生じる問題というものもある。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が指摘した。

 * * *
『アイムホーム』(木曜午後9時テレ朝系)、『Dr.倫太郎』(水曜午後10時日テレ系)、『天皇の料理番』(日曜午後9時TBS系)。春ドラマを視聴率順に並べたら、こうなるようです。今クールは、男性主人公の世界がウケているもよう。

 個人的には『ようこそ、わが家へ』(月曜午後9時フジ系)や『64』(土曜午後10時NHK)にも期待しています。原作の骨格がしっかりしていて展開がスピーディー、演出は丁寧で緊張感が持続する。基本線がきっちり押さえられていれば、注文したい点はいくつかあってもドラマとして十分楽しむことができる。

 ただ、春ドラマ全体を見回すと、気になることが一つ。それは、「カブリすぎ」問題。

 たとえば『ようこそ、わが家へ』の冒頭、印象的なシーン。相葉雅紀演じる主人公のデザイナーに、厳しくダメを出す書籍編集者が登場。実にうまい! 出版社に本当にいそうな話ぶり、雰囲気。演じていたのはベテラン俳優・光石研。直感的に職業のクセや雰囲気を掴み、その役になりきってしまうあの名優。

 それから3日後、キムタク主演『アイムホーム』が始まると……あれれ? 主人公・家路久が配属された第十三営業部の課長席に、またもやあの人が座っている。窓際に置かれても威張り続ける証券マン・轟春木を好演しているのは光石さん。相変わらず上手です。

 さて、その『アイムホーム』で、かつて家路の部下だった黒木仁。ぴっと伸びた背筋、スリムな背広姿。いかにも切れ味の鋭い花形証券マン。演じているのは、これまた名優の新井浩文。いったいこの人の演技の巧さには何度脱帽させられたことか。

 でも、その新井さんが2日後の『64』で主人公が属する県警広報部の係長となって登場してきた時には、ちょっと……。同クールに放送される複数のドラマに、こうも役者がかぶってくると、何だか頭がごちゃごちゃしてくる。

 もちろん、役者のせいではない。地道に舞台や映画の現場で磨き上げてきた演技力、集中力。それが今、脚光を浴びて仕事が急増。ベテラン役者の活躍がテレビで目立つ時代へ。

 昔、劇団で仕事をしていた経験がある私自身、役者という職業を続けていくエネルギーと勇気に対してはひたすらリスペクトしています。ベテランの仕事が増えるのは本当に喜ばしいこと。

 つまり「カブリすぎ問題」は役者よりも、キャスティングする側の問題。いや、役者だけではない。ロケ現場だって大いにカブッています。

 火曜放送の『戦う!書店ガール』(午後10時フジ系)には、吉祥寺のコピスやジュンク堂書店吉祥寺店がリアルに映し出される。その一方、翌水曜放送の『心がポキッとね』(午後10時フジ系)では、吉祥寺サンロードや井の頭公園が背景に登場してくる。

 同じ場所をロケしているドラマが、同じ放送局で連日続くというのもどうなのか(制作は関西テレビとフジテレビが担当)。もちろん、たとえ撮影場所が重なっていても脚本や演出によって、まったく違う世界に見えてくることはありえるけれど、今回はかぶり感の方が強い。なんだか2つのドラマが地続きみたいに感じられて困る。

 この「カブりすぎ問題」、最近拍車がかかってはいませんか?

 いったん評判がたつと、同じ役者や場所に指名が集中? 誰かが太鼓判を押したとなると、今度はみんなで相乗り?  以前は出自がよくわからず相手にもされなかった役者が、いったん「個性派」として認知されると、一気に仕事殺到?

 存在を知られていない名優は舞台や映画の現場にまだまだたくさんいるはず。魅力的な街や風景も、全国各地にたくさんあるはず。もっともっと未知の才能や場所を、それぞれの制作者の独自の目で掘り起こしていってほしい。一人を消費し尽くすのではなく、隠れた才能をいくつも見つけて育てていってほしい。

 結果として、それがドラマ界を豊かにするはずです。いつか、アメリカのように、テレビドラマの地位が映画に伍し、いや、凌駕する時代が来るためには。ドラマへの愛をこめて。

関連記事

トピックス

今年もMVPの最有力候補とされる大谷翔平(写真/Getty Images) 
《混迷深まるハワイ別荘訴訟》「大谷翔平は購入していない」疑惑浮上でセレブ購入者の悲痛、“大谷ブランド”を利用したビジネスに見え隠れする辣腕代理人の影
女性セブン
志穂美悦子との別居が報じられた長渕剛
《長渕剛・志穂美悦子についに別居報道》過去の熱愛スキャンダルの時も最後に帰った7億円豪邸“キャプテン・オブ・ザ・シップ御殿”…かつては冨永愛が訪問も
NEWSポストセブン
死因は上半身などを複数回刺されたことによる失血死だった(時事通信フォト)
《神戸女性刺殺》谷本将志容疑者が被っていた「実直で優秀」という“仮面” 元勤務先社長は「現場をまとめるリーダーになってほしかったくらい」と証言
週刊ポスト
「部員は家族」と語ってきた中井哲之監督だが…(時事通信フォト)
“謝罪なし対応”の広陵高校野球部、推薦で入学予定だった有力選手たちが進路変更で大流出の危機 保護者は「力のある同級生が広陵への進学をやめると聞き、うちも…」
週刊ポスト
還暦を過ぎて息子が誕生した船越英一郎
《ベビーカーで3ショットのパパ姿》船越英一郎の再婚相手・23歳年下の松下萌子が1歳の子ども授かるも「指輪も見せず結婚に沈黙貫いた事情」
NEWSポストセブン
ここ数日、X(旧Twitter)で下着ディズニー」という言葉波紋を呼んでいる
《白シャツも脱いで胸元あらわに》グラビア活動女性の「下着ディズニー」投稿が物議…オリエンタルランドが回答「個別の事象についてお答えしておりません」「公序良俗に反するような服装の場合は入園をお断り」
NEWSポストセブン
志穂美悦子さん
《事実上の別居状態》長渕剛が40歳年下美女と接近も「離婚しない」妻・志穂美悦子の“揺るぎない覚悟と肉体”「パンパンな上腕二頭筋に鋼のような腹筋」「強靭な肉体に健全な精神」 
NEWSポストセブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《還暦で正社員として転職》ビッグダディがビル清掃バイトを8月末で退職、林下家5人目のコンビニ店員に転身「9月から次男と期間限定同居」のさすらい人生
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された佳子さま(2025年8月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《日帰り弾丸旅行を満喫》佳子さま、大阪・関西万博を初訪問 輪島塗の地球儀をご覧になった際には被災した職人に気遣われる場面も 
女性セブン
侵入したクマ
《都内を襲うクマ被害》「筋肉が凄い、犬と全然違う」駐車場で目撃した“疾走する熊の恐怖”、行政は「檻を2基設置、駆除などを視野に対応」
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 大谷翔平「賭博トラブル」の胴元が独占告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 大谷翔平「賭博トラブル」の胴元が独占告白ほか
NEWSポストセブン