世界的に株価が大暴落するなか、米国はなぜ景気を悪くするともいわれる「利上げ」をするのか。経済学者で投資家の小幡績氏が解説する。
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日本や米国では近年、金利引き下げが進められ、「ゼロ金利」と呼ばれる状況になっています。
金利を下げると、投資や消費が活発になります。企業は安くお金を借りられるので設備投資をしたり、新たなプロジェクトを立ち上げたりしたときに、採算が取れるようになります。仮に金利が5%なら1億円の投資に対して年間500万円儲からないと利子が払えませんが、2%なら200万円の儲けでもトントンになります。だから、企業の設備投資が活発になり、新しいビジネスも起こりやすくなります。
最大の懸念は、バブルを膨らませてしまうことです。先ほど説明したように、株式投資も不動産投資も金利が低ければ低いほど、盛り上がります。盛り上がるからさらに投資が殺到します。バブルです。
金融緩和(金利の引き下げ)の目的はそもそも資産市場と関係なく、我々の日常の経済活動を良くするためのものです。企業も個人もお金を借りやすく、使いやすくなります。その結果、経済状況が良くなり、新たに人を雇う必要が出てきて失業が減る。そうした効果を狙って金利を下げるのです。
ところが、失業は十分減ったのに、金融緩和を続けていると、失業をこれ以上減らせない。当初の目的を達成する効果はゼロで、資産市場のバブルが膨らむリスクだけが大きくなるのです。
もうひとつの懸念は、「ゼロ%と0.5%は大きく異なる」ということです。(米国の場合は文字通りのゼロ金利を避けるために、0.1%程度にして、これを実質ゼロとしていますが)ともかくゼロというのは危険なのです。要はタダですから、いつでも、いくらでも中央銀行から短期の資金であれば借りられることになる。そうなると、お金がじゃぶじゃぶ余っているような状態になり、金利に関する市場、お金の貸し借りの市場が不安定になるのです。タダより高いものはない、ともいえます。