三菱財閥に危機が訪れている。燃費不正が発覚した三菱自動車の処遇をめぐり、グループとしての「重大な決断」を迫られているのだ。
関係者が固唾を呑んで見守っているのが、「三菱金曜会」の動向である。金曜会とは、三菱グループ29社の会長、社長など48人が一堂に会する会合で表向きは親睦会とされているが、実質は、三菱グループの最高意思決定機関と見られている。不正発覚以来、初の金曜会が5月13日の金曜日に開催される。ここで何が議論され、何が結論となるのかで、三菱自の命運が決まる。
そんな緊迫した空気のなか、三菱グループの重鎮、相川賢太郎・三菱重工相談役(88)の発言が物議を醸している。
「会社が潰れたら3万人の従業員が路頭に迷うことになるんですから、そんなに簡単に潰せるもんじゃないんです。三菱グループってのは、そんなことは絶対にしないですよ」(週刊新潮5月5・12日合併号)
相川氏は三菱重工の社長、会長を歴任し、現在も“三菱グループの天皇”と呼ばれるほど隠然たる影響力をもつ。三菱自の相川哲郎社長は賢太郎氏の息子でもあるだけに、その発言が「今回もグループが救済するのか」との憶測を呼んだ。
だが、相川発言は三菱グループの総意ではないようだ。企業経営の情報誌、月刊『BOSS』の編集委員、関慎夫氏はこう指摘する。
「会社を潰すと何万人もの社員が路頭に迷う、彼らも同じ日本国民だ、だから三菱自を支援すべきという『三菱=日本』という考え方は、いかにも“オールド三菱”の発想です。いまの三菱グループの経営者にそんな発想はありません」
事実、三菱重工の現社長、宮永俊一氏は会見で「感情的な気持ちに流れずに、きちんと1つ1つ冷静に判断していかなければならない」と述べ、相川相談役との温度差を感じさせた。三菱自の社員も、苦虫を噛み潰した表情でこういう。
「救済はありがたいが、いまの段階で口にしてほしくなかった。目立てば目立つほど、世間から批判を受けることになりますから」
※週刊ポスト2016年5月20日号