その中で、まったく忘れられている論点がある。唐突に聞こえるかもしれないが、頭の体操として皇族方の海外王室への御輿入れを考えてみたい。世界的に見るとロイヤルファミリーの交流が結果的に国を資する例は多い。また、これから述べるように戦前の日本でも同様の発想はあったし、中世ハプスブルク家が王女を欧州各国に嫁がせて国家の安全保障と発展につながったという事例もある。

 実は、神話以来の皇室の歴史の中で海外王室との縁談は何度か浮上し、実現したものもある。明治初期、ハワイのカラカウア国王は、姪の王女と皇族の結婚を提案したものの、明治政府は断っている。アメリカ併合より前のハワイ王国は、迫り来る国家の危機を乗り切るために日本との合邦を模索し、皇室との婚姻で後ろ盾を得ようとしたのだ。

 成立した縁談としては朝鮮国王だった李王家への輿入れが挙げられる。梨本宮方子女王と李王世子(跡継ぎ)垠との結婚は内鮮一体の象徴として当時大変持て囃された。満洲国との縁談も皇弟愛新覚羅溥傑に嵯峨侯爵家の令嬢浩が嫁ぐという変則的な形で実現した。

 皇族が嫁ぐことができなかったのは、旧皇室典範によって皇族女子の婚姻相手は皇族、朝鮮の王公族、華族に限定されていたためだ。そこで白羽の矢が立ったのがのちに「流転の王妃」として知られる浩だった。皇族ではなかったものの、貴種が外国との友好のために架け橋となった例である。

 また、エチオピア皇太子と華族子女(黒田広志子爵の娘雅子)の縁談も進んだが、エチオピア進出を目論んでいたイタリアと日本に同盟関係が成立したことでご破算となっている。ここまで話を進めて来て、読者の中には何を昔の話をと思う向きもあるかもしれないが、今こそチャンスが訪れているのだ。

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