だが、今の巨人にその面影はない。清武氏の目には人材を育てられなくなり、悪循環に陥った古巣は、どう映るのか。取材を申し込むと、「現在の私はノンフィクション作家です。言いたいことがあれば自分で自由に書きます。今は、巨人の問題について何も話すことはありません」と語るのみだった。前出・野崎氏はこういう。

「あの時、渡辺さんと清武さんが決定的に対立したことで、今の巨人には『清武の構築したスタイルを否定しなければいけない』という前提ができているように思います。結果として、育成制度は弱体化した。騒動がなければ、巨人は手が付けられないほど強いチームになっていたでしょう」

 清武氏が去ってからの巨人が、「補強頼み」に回帰したのは明らかだ。清武氏の後任となった原沢敦GM兼編成本部長は、就任当初こそ「『育成の巨人』は継続する」と表明したものの、掛け声だけに終わった。

「清武氏は『即効薬であるFA補強選手は、せいぜい3~4年で衰えがくる。生え抜き選手中心のチームを作りたい』と語っていた。ところが原沢氏は就任した途端に『3年連続のV逸は許されない』として、FA市場で村田修一(2年5億円、横浜から)と杉内俊哉(4年20億円、ソフトバンクから)を獲得するなど、総額30億円の大補強に走った。それまでの5年間で獲得したFA選手は2009年の藤井秀悟(日本ハムから)だけでしたから方針転換は明確でした」(スポーツジャーナリスト)

 以降、2013年オフに大竹寛(広島)、片岡治大(西武)、2014年オフに相川亮二(ヤクルト)、金城龍彦(横浜)、2015年オフに脇谷亮太(西武)、そして昨年オフの山口俊(横浜)、森福允彦(ソフトバンク)、陽岱鋼(日本ハム)と毎年のようにFA市場で選手を買い漁ってきた。

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