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「最後にもう一度手料理を食べさせたかった」と池部良さん妻

 10月8日、敗血症で亡くなった俳優の池部良さん(享年92)を看取った妻、美子さんは、時折目に浮かぶ涙をぬぐいながら、ゆっくりとかみしめるように、夫への思いを語った。

「主人は『大丈夫だよ、あと10年は生きる』『先に美子が逝っちゃ嫌だよ』といつも申しておりました。ですから、まさかこんな形で主人が逝ってしまうとは、思ってもみませんでした」(以下、美子さん)

 そう話す美子さんの視線の先には、まだ真新しい後飾り祭壇が置かれ、火の灯った燭台が2本と骨壺、その横には池部さんの在りし日の写真が飾られている。

 池部良さんは1918年生まれ。立教大学文学部を卒業後、1941年、東宝映画に俳優として入社。『闘魚』でデビューしたが、1942年に出征。1946年に復員後、1949年『青い山脈』で二枚目俳優としての地位を確立し、以来、出演作品は150本を超える。文筆家としても知られ、1991年には日本文芸大賞を受賞していた。

 3年前に肺炎になってから入退院を繰り返していたが、「生涯現役」が口癖で、病室に原稿と万年筆を持ち込み、執筆に励んでいた。

「最後の1週間は高熱が続いていましたが、もうあと1週間もしたら、点滴を外して食事をとることができると聞いていたんです。ずっと点滴で、口から水を飲むことも食事をとることもできなかったので、もう一度、手作りの料理を食べさせてあげられなかったのが心残りでなりません」

 池部さんがまだ食事をとることができる状態のころ、美子さんは毎日欠かさず、手作りの料理を持って病院に通ったという。

「病院でもお食事は出るのですが、お魚やお肉なども食べさせてあげたかったので、細かく刻んで、とろみをつけて食べやすくして持っていきました。今年の夏は暑かったでしょう? 昼も夜も、作ったらすぐに病院に飛んでいきました」

 そんな美子さんのことを、池部さんは病床にありながらも気づかっていた。

「毎日お見舞いに行っていたのですが、ちょっと私の姿が見えないと、看護婦さんに『美子の姿がない』といって心配したり。ある夜、私が寝ていて電話に出られなかったときには、麻布警察署に電話をしたらしく、警察の方が家に訪ねていらしたこともありました」

※週刊ポスト2010年10月29日号

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