国際情報

ユニクロほか中国から工場を引き揚げる日本企業が続出の指摘

 日本企業が出資する中国現地法人は約5000社近く。これらの企業は今回の尖閣諸島のような問題が起こるたびに、反日運動などの中国リスクに脅えてきた。ならば、いっそのこと出ていったらどうか。もう、この国には安い人件費のメリットも失われつつあるのだから、と評論家の宮崎正弘氏は指摘する。 

******************************
 中国では今年、広東省を中心にストライキの嵐が吹き荒れた。ホンダやデンソー、ブラザー工業などの工場は操業を停止する事態になり、ホンダは平均24%の賃上げ要求をのんだ。今年5月中旬からの2か月間で、ストが発生した外資系企業は40社以上にのぼり、その内7割以上が日系企業だった。

 日系企業の賃金は他国の外資系企業より安いのかというと、むしろ逆で、賃金も待遇も上である。日系企業はゴネればすぐに折れるので狙い撃ちされているだけだが、日系企業が賃金を上げれば、いずれ他の外資系もその余波で上げざるをえなくなる。

 昨年まで広東省では平均賃金が月額約790元(約1万円)だったが、今年は1000元(約1万3000円)を超えた。人件費の上昇で、中国に工場を建てるメリットは薄れてきている。

 これまで多くの日本企業が中国市場の巨大さと人件費の安さに目が眩んで続々と中国に進出した。日本のような民主主義の国家で、民間企業に対して強制的に撤退を命じることは不可能だ。しかし、徐々に「中国リスク」の大きさに気づき、現実には日本企業自身が撤退の意思を示しつつある。

 たとえば、ユニクロのファーストリテイリングは、人件費の高騰からすでに製造の一部をバングラデシュに移し、今後は製造の3分の1を中国以外へ移転させる計画だ。すでに欧米のアパレル企業は続々とバングラデシュに進出しており、日本企業もそれに続けとばかりに「バングラ詣で」に繰り出している。繊維産業だけでなく、他の産業でも脱中国の動きが起きており、新たな製造拠点としてベトナムやインドも人気である。

※SAPIO2010年11月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン