国内

「耳かき殺人」21歳被害女性 月収は65万4250円の月もあった

 裁判員制度初の死刑か無期かを問われた注目の「耳かき殺人」事件。だがそもそも殺人にいたるまで、男はどれほどのカネを遣い、女はどう応じたのか。新聞テレビが伝えない細部を、山藤章一郎氏がリポートする。

******************************
 42歳の被告は1日7時間も21歳の江尻美保さん=(源氏名・まりな)といる時があった。 耳かき店の料金は、1時間4800円。これに指名料、延長料がつく。7時間の場合は、4800円+指名料1000円(1時間ごとにつく)×7で、4万600円。

 耳かきは最初の数回だけだった。膝枕もしてもらえなくなった。被告はほとんど、正座椅子に座る女の家族や友人の話を聞き、DVDを見、ゲームをし、菓子を食べて過ごした。性的サービスはなかった。からだを触ることもできなかった。

 誕生日を、聞いていた。プレゼントをいつ持ってくればいいか尋ねた。「どうしても当日がいい」と答えられた。そこで勤め先の有給を取り東京駅でゼリーを買って昼前にアキバに着いた。開店は正午。

 駅のホームで、まりなに会った。「早いですね」と話しかけられ「早いかな」と自分は答えた。少し遅れて店に入ると、「待ち伏せされてたの」と店の人に話すまりなの声が聞こえた。そのまま帰った。ところが5 日後、まりなのブログを開けると、「突然だけど元気かなあ、ピヨ吉」とあった。

 ピヨ吉は、まりなが大事にしているひよこのぬいぐるみだ。写メにとってあるのを見せられ、ふたりで名をつけた。厭がられていないんだと思った。

 予約を入れて、翌日行った。誕生日に待ち伏せしたのではないことを説明した。分かってもらえた。その1か月ほどあとから、平日の金曜にも行くようになった。「来てほしいと。何度もいわれて」

 金曜は土曜の、土曜には日曜の、日曜には次の金曜日の予約をした。1日に何時間もいることも「ぜんぜん厭じゃない」と答えられ、ほっとした。

 週に3日。1日に7~8時間指名した。ケンタッキーやコンビニの菓子や弁当、ホカ弁を持ち込んでふたりで食べた。 言われたものと違うものを買って行って文句をいわれた。

「海鮮丼、イカっていったのにタコ買ってきてどうすんの」この時以外にも、叱られて涙ぐんだことが、何回かあった。

 月収についてたびたび訊かれた。「答えたくないのでいわなかったら、(まりなは)指で2とか3とか『これぐらい? これぐらい?』と訊いてきた」

 女と過ごすためにカネと食いものを運ぶ男に、女は特別な感情もないのに疑似レンアイを見せてもっとカネを遣わせようとしたのだろうか。まりなの月収は65万4250円になることもあった。

 この〈耳かき店〉のほかの女性の月収例―。

 茜(21歳・仮名)、1日10時間勤務。30分コースと1時間コースを10本、指名 8本で、1日2万1600円。これを20日勤務する。43万2000円になる。

 指名を増やし、居つづけの<太い客>を掴むのが収入増のカギであることはいうまでもない。口げんかになって予約をせずに帰った被告に、まりなは自らメールをする。

「さっきはごめん、次の予約は?」。これを受け、被告はまた店へ行くのであった。

※週刊ポスト2010年11月19日号

関連キーワード

トピックス

初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン