国際情報

仙谷氏の「活躍」により中国側に狙い通りの外交成果と識者

 横浜でのAPEC首脳会議を前に、菅政権は中国に翻弄され続けた。日中首脳会談のドタキャンから“廊下会談”、続く前原外相への執拗なバッシングまで胡錦濤政権は総力を挙げて、日本を揺さぶりに出ていた。一連の動きの本当の標的となっているのは、「影の総理」だけでなく、今や「裏の外相」とも呼ばれる仙谷由人・官房長官だとジャーナリストの武冨薫氏は言う。

************************
 ハノイでの日中首脳会談のドタキャン、続く前原誠司・外相への批判は、「親米、反中国」の姿勢を取る前原外相を交渉相手から排除するための、中国側のシナリオ通りの芝居だったが、日本側はパニックに陥り、与党内からも、「前原氏はもう、外相を辞めた方がいいのではないか」(下地幹郎・国民新党幹事長)と外相更迭論が噴き出した。
 
 まさに中国側の思う壺だろう。
 
 改めて仙谷氏が「裏の外相」として主導した対中外交のこれまでの“成果”を見ると、いかに中国の振り付け通りに動かされてきたかがわかる。

 始まりは尖閣問題をめぐる交渉だ。中国側が強硬姿勢を取ると、仙谷氏は外務省の頭越しに細野豪志・前民主党幹事長代理を“密使”として派遣し、戴秉国・国務委員と会談させて人質同然に拘束されていたフジタ社員の解放につなげた。
 
 次に10月5日にASEM(アジア欧州会議)の会場、ブリュッセルの王宮の廊下で行なわれた菅首相と温首相の「懇談」である。これも事前に仙谷氏と戴氏との電話会談で根回しされたとされる。前原外相は蚊帳の外に置かれていた。
 
 しかし、民主党国際局で野党時代から中国との党外交にかかわってきたベテラン議員は仙谷外交の危うさをこう指摘する。
 
「中国側は外務省と共産党中央対外連絡部が情報を共有しながら、正規の外交ルートでは強硬に、党ルートでは柔軟にと立場を使いわけて日本の官邸と外務省を分断しようとしている。これでは中国にコントロールされるがままだ」
 
 実際、仙谷氏はすでに中国に大きな譲歩をしている。11月13日からのAPEC首脳会議への参加というカードを握っていた中国側は、海上保安庁が尖閣での中国漁船の行為を撮影したビデオを公表しないように要求し、仙谷氏はビデオ全面公開について「いろんな配慮からよくない」(11月1日、官房長官会見)との姿勢を崩さなかった。
 
 問題のビデオは国会に提出されたが、視聴できたのは衆参の予算委員会理事限り。仙谷氏の“活躍”によって、中国側に狙い通りの結果がもたらされた。

※SAPIO2010年11月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
国民民主党から参院選比例代表に立候補することに関して記者会見する山尾志桜里元衆院議員。自身の疑惑などについても釈明した(時事通信フォト)
《国民民主党の支持率急落》山尾志桜里氏の公認取り消し騒動で露呈した玉木雄一郎代表の「キョロ充」ぷり 公認候補には「汚物まみれの4人衆」との酷評も出る
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
「松井監督」が意外なほど早く実現する可能性が浮上
【長嶋茂雄さんとの約束が果たされる日】「巨人・松井秀喜監督」早期実現の可能性 渡邉恒雄氏逝去、背番号55が空席…整いつつある状況
週刊ポスト
発見場所となったのはJR大宮駅から2.5キロほど離れた場所に位置するマンション
「短髪の歌舞伎役者みたいな爽やかなイケメンで、優しくて…」知人が証言した頭蓋骨殺人・齋藤純容疑者の“意外な素顔”と一家を襲った“悲劇”《さいたま市》
NEWSポストセブン
6月15日のオリックス対巨人戦で始球式に登板した福森さん(撮影/加藤慶)
「病状は9回2アウトで後がないけど、最後に勝てばいい…」希少がんと戦う甲子園スターを絶望の底から救った「大阪桐蔭からの学び」《オリックス・森がお立ち台で涙》
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン