国内

テレビ局、格安で電波を使用し荒稼ぎ だが国民は損している

 週刊ポスト本誌は昨年末、テレビ局の電波利用料に関する資料を入手、その料金がいかに格安であるかを報じた(2010年11月12日号)。全国128局のテレビ局の事業収入が2兆9676億円にのぼるのに対し、電波利用料はわずか42億4641万円(数字はすべて2008年)。テレビ局がいかに格安で電波を使用し、それで荒稼ぎしているかがわかろう。また、携帯電話会社(5社)が支払う利用料が約545億円であることを考えても、テレビ局の優遇ぶりは際立っている。

 この優遇ぶりを是正するための制度として「電波オークション」構想を民主党は2009年のマニフェストに掲げた。これは、テレビ局などが格安で利用している電波を競売にかけることで有効利用し、かつ、新規事業者にも電波を開放する制度である。だが、この制度はいつの間にか棚上げされ、今国会に提出される予定の電波法改正案から抜け落ちている。

 というのも、電波オークションはテレビ局にとって「無料割り当て」と「格安利用料」という優遇制度を崩壊させる恐れがあったのだ。

 テレビ局は地デジ移行にあたっても、無料で電波帯を割り当てられた。その電波帯の価値を海外の事例をもとにGDP比で試算すると、総額2兆4000億円に相当するという(池田信夫著『新・電波利権』参照)。

 だが、電波オークションが広まっていけば、テレビの電波帯についてもオークションしろという声もあがってこよう。たとえテレビ局がオークションの適用から除外されたとしても、格安な電波利用料の問題がクローズアップされることになるのではないか。

 しかし、格安の電波利用料で稼いできたテレビ局が値上げにすんなり頷くはずがない。なるほど、総務省もテレビ局も、既得権益を守るために「電波オークション反対」で思惑が一致するわけだ。しかも、新規参入する事業者にとっても、オークションで初期費用が跳ね上がるのは避けたいところ。今回の「消えた電波オークション」は、官僚や企業は一切損しない仕組みになっていたのである。

 その代わり失われたのは、オークションによって得られるはずだった「公平な競争」と「多額な国庫収入」である。つまり、損したのは国民だ。

※週刊ポスト2011年2月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン