国内

大前研一氏 日本の格付けがギリシャ並みに落ちる危険性指摘

 菅政権が打ち出した「社会保障と税の一体改革」をめぐる議論には、大きな盲点がある。国民生活を危機に陥れるその基本的問題点を、大前研一氏が指摘する。

 * * *
 現在の日本の財政状況は、単純にいうと「50の収入に対し、100の出費と1000の借金」である。この方程式を一体どうやって解くのか。

 問題を解決するには、収入を2倍にするか、出費を半分にするしかない。ただし、税収自体は50兆円ではなく40兆円しかないから、2倍にして80兆円。同時に出費を、イギリスのキャメロン政権のように公務員を50万人削減するなどして、せめて20%減の80兆円にしなければならない。それで、ようやくプライマリーバランス(基礎的財政収支)が均衡する。しかし、借金は返せない。

 現実には国債費(利払い費+償還分)だけで年間20兆円以上あるから、1000兆円の元本を返済することはできないのだが、とりあえず収支を均衡させないと日本国債の格付けが現在の「AA-(マイナス)」からギリシャ並みのBB+あたりまで落ちて、デフォルト(債務不履行)に追い込まれるのは必至である。

 逆にいえば、日本がデフォルトせずに何とか食いつないでいく方法は、税金倍増と歳出の20%削減しかないのである。債務の元本を返済するには、さらに歳出を20%削減し、20兆円ずつ50年かけて返済していくしかない。

 万一デフォルトすれば、借金は返さない、とトボケることもできるが、日本人がせっせと蓄えてきた1400 兆円の個人金融資産は消えてなくなるだろう。金融機関は顧客から預かったお金で国債を買っているので、国がデフォルトしたら金融機関もすべて潰れる。その結果は、国が国民の貯金を召し上げるのと同じである。

 そこで国が辻褄を合わせるためにお金を印刷したらハイパーインフレになり、国の借金は帳消しになるが、貯金も一気に目減りする。これまた財産没収に等しい。つまり貯金は結局、時間差の“納税”に化けて国家に没収されてしまうのだ。

※週刊ポスト2011年3月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン