国内

福島・浪江町の被災者「待遇いい避難所の話聞くとムカつく」

「新聞やテレビは双葉町のことばかりで、なぜ浪江町のことは何も報じないんでしょうか」

 編集部に電話を掛けてきたその女性は、ひどく憤っていた。

「私は浪江町出身で、両親は浪江町から県外へ自主避難しました。集団で避難した人間がいい思いをして、個人で避難した人間が無視されるのはおかしい。浪江町の本音はネットの掲示板にあります。見て下さい」

 掲示板には、「現在の心境や気持ちなど、自由に吐いて下さい」とある。見てみると、そこには行政や東電、マスコミや隣町への不満がギッシリ書き込まれていた。

〈ニュースの人数は、避難所にいる人しかカウントされません。自主的に親戚などを頼って避難した人は、お金はかかるし損なのです。待遇のいい避難所にいる人の話を聞くと、ちょっとムカつく!〉

〈こうなったら町と町との争いですからね〉

 過激化する町民を諫めるように、

〈いくら愚痴を吐いてもいい掲示板にしたとはいえ、浪江町人だけがみていると思ったら大間違いですよ!(中略)読んでいて同じ浪江町人として恥ずかしいです(;_;)心までが原発や災害に負けてはダメですよ!〉

 と、こんな書き込みがあるほどに掲示板は荒れていたのである。

 浪江町は福島第一原発のある双葉町の隣に位置するが、東西に長い形をしているため、避難、屋内退避、その圏外と、町民の置かれた立場も様々。それだけに、町ごと避難した双葉町や大熊町ほど注目されにくいのは確かだ。

 朝のワイドショーで、新学期を迎える双葉町の子供たちに全国からランドセル79個が寄付されたと伝えられた日、浪江町の災害対策本部に電話してみると、

「ランドセルですか? 残念ながらそういうお話はありません。浪江町は双葉町さんのようにお金もないので、ランドセルを買ってあげることもできません。寄付してくださる方があれば、ありがたい話ですが、今のところそういうご支援はありません……」

 浪江町は、原発のある双葉町に比べて交付金なども少なかったのは事実。そのうえ避難先でも恵まれないとすれば、町民が愚痴をこぼしたくなるのも無理はない。

※週刊ポスト2011年4月22日号

関連キーワード

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン