国際情報

どんな国難も“日本人”がいる限り日本は不死鳥のように蘇る

 日本の歴史を振り返ると、国が滅びても不思議ではないような危機に何度も直面してきたが、そのたびに日本人は逆境を跳ね返し、さらに強靱な国へと発展してきた。まるでダメージを負った筋肉が、以前より強く、しなやかに「超回復」するように。白洲次郎や福沢諭吉などの評伝で知られる作家の北康利氏は「どんな困難も、勤勉で気骨のある日本人がいる限り、必ず乗り越えられる」と激励する。

* * *
 気骨ある日本人のうちの一人が、吉田茂の側近だった白洲次郎である。
 
 白洲は終戦連絡中央事務局参与(後に次長)として占領軍に対し、言うべきことは言う、という姿勢を貫き、彼らから“従順ならざる唯一の日本人”と呼ばれた。
 
 そして白洲は吉田とともに、商工省と外務省の一部を改組統合して通商産業省(現在の経済産業省)を設立する。
 
 それは、荒廃の極みにあったわが国を何とか復興させようとする彼らが、知恵を絞った末に到達した秘策であった。この国には輸出できるような天然資源などない。戦争に敗れ最貧国になってしまった状態では、内需拡大による産業振興も望み薄だ。
 
 何もかも失ってしまったわけだが、それでもまだ一つ残っているものがあった。それは、ほかならぬ“日本人”だった。匠の伝統を受け継いだ、手先が器用で我慢強く、向上心旺盛な、世界有数の勤勉な国民である。
 
 通産省は、原料を輸入して加工を加え輸出するという、いわゆる加工貿易による経済復興の旗振り役となった。それはやがて世界中を瞠目させ、戦勝国を歯軋りさせる奇跡の復興へとつながっていく。
 
 ギリシャ神話では、パンドラの箱が開いた時、最後に残ったのが“希望”だったというが、戦後日本がすべてを失った時に残ったのは、まさに匠の伝統を受け継いだ“日本人”だったのだ。
 
 その後、通産省の成功を見習って、いくつもの国が類似の役所を作り、貿易振興策を打った。ところがそれらの国では、日本のような奇跡的な経済成長は見られなかった。
 
 それは何故か? 答えは簡単だ。その国には“日本人”がいなかったからである。
 
 欧米特権階級の中には“ノブレス・オブリージュ(位高き者、務め重し)”という考え方があるが、この日本というモラル高い国には、特権など享受しておらずとも“人としてどう行動するべきか”というプリンシプル(生き方の美学)を持つ人間が大勢いる。
 
 津波の迫る中、最後の瞬間まで落ち着いた声で避難を呼びかけるアナウンスをして濁流にのみ込まれた南三陸町の女性職員・遠藤未希さん(25)の悲話を耳にした時、私はまだこの国には“日本人”がいると確信した。そして、まさにこの国の未来に希望の光を見せてくれた“未希”という彼女の名前に思わず涙した。
 
 今この国が直面している困難な局面でもなお、“やむにやまれぬ大和魂”をもって立ち上がる彼女のような気骨ある日本人がいる限り、どんな国難が訪れようと、さらに強い国となって何度でも不死鳥のように蘇ることができる。
 
 今回の未曾有の危機もまた、そうであるに違いない。

柳ならぬ……竹に雪折れなし
 
 日本人の強さを世界に示す時は今、である。

※SAPIO2011年4月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
亡くなったアンナ・ケプラーさん(TikTokより)
巨大クルーズ船で米・チアリーダー(18)が“謎の死”「首を絞められたような2つのアザ」「FBIが捜査状況を明かさず…」《元恋人が証言した“事件の予兆”》
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
決定戦で横綱を下した安青錦(写真/JMPA)
【最速大関・安青錦の素顔】ウクライナを離れて3年、なぜ強くなれたのか? 来日に尽力した恩人は「日本人的でシャイなところがあって、真面目で相撲が大好き」、周囲へ感謝を忘れない心構え
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
主演映画『TOKYOタクシー』が公開中の木村拓哉
《映画『TOKYOタクシー』も話題》“キムタク”という矜持とともにさらなる高みを目指して歩み続ける木村拓哉が見せた“進化する大人”の姿
女性セブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト
CM露出ランキングで初の1位に輝いた今田美桜(時事通信フォト)
《企業の資料を読み込んで現場に…》今田美桜が綾瀬はるかを抑えて2025年「CM露出タレントランキング」1位に輝いた理由
NEWSポストセブン
亡くなったテスタドさん。現場には花が手向けられていた(本人SNSより)
《足立区11人死傷》「2~3年前にSUVでブロック塀に衝突」証言も…容疑者はなぜ免許を持っていた? 弁護士が解説する「『運転できる能力』と『刑事責任能力』は別物」
NEWSポストセブン