国内

ユッケ事故の肉卸業者 管理の目避けるため組合脱会との指摘

4人の死亡者を含む100人以上の食中毒患者を出した焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の問題は、単に「ユッケは危険なのか」という話ではない。流通から焼き肉店で皿に並ぶまでの、「コストカット追求」が引き起こす食肉の「驚くべき実態」にこそ真相がある。

卸売業者「大和屋商店」(東京・板橋区)が食中毒の発生日の直前に「えびす」に卸した肉は、さいたま市食肉中央卸売市場などで仕入れた合計14頭の牛だった。その中には、食肉業界では「老廃牛」と呼ばれる和牛の経産牛(仔牛を産んだ牝牛で肉質は低いとされる)10頭があった。

古くから大和屋商店を知る市場関係者が明かす。

「都内の高級ホテルにも納入している老舗の卸売業者です。しかし、高額な未経産牛や去勢牛ではなく、時間が経つと質が落ち、ガクンと値段が安くなる経産牛を積極的に狙う業者でもありました。恐らく『えびす』のような格安焼き肉店に売るためだったのでしょう」

質が落ちても経産牛ならば「和牛」という表示はできるので、安く買えれば得だという発想だったのだろう。さらに今回は交雑種まで混ぜて偽装表示していたことも判明している。

その意味でいえば、「えびす」の肉は「値段に見合う品質」だったといえる。

こうした消費者を騙すような流通が可能なのは、大和屋が1994年、東京都内の小売、卸業者が加盟する都食肉事業協同組合を脱会したからである。同組合の大野谷靖・事務局長がいう。

「組合員は厚労省による口蹄疫やBSE(牛海綿状脳症)の対応を指導する講習会や、衛生管理の指導、通達を受ける。しかし、脱退すれば管理の目が行き届かなくなる」

大和屋が脱退した理由を、前出の市場関係者はこう証言する。

「月4000円程度の組合費が高いことを脱退の理由にしていました。しかし、本音は違ったかもしれません。加盟業者は、価格を安定させるための“業界内の適正価格”を守らなくてはならないので、自由に値が付けにくい。そうしたしがらみに反発して脱会したのではないか。

大和屋がコストカットを過剰に進めたことは間違いないでしょう。内臓を扱う際にまな板や包丁を代えたり、丁寧に洗ったりする常識的なことも、人件費がかかるといって省いていたようです」

※週刊ポスト2011年5月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン