国内

被災地に派遣された消防隊員 現在の仕事の意味に悩みを抱く

東日本大震災の復興支援として各自治体から警察、消防などが応援に出掛けているのはテレビや新聞でよく耳にする。彼らの活動は讃えても讃え過ぎることはないが、実際に応援のため出動した各自治体関係者から話を聞くと、せっかくの“応援”が空回りしていることも多いようで……。

まずは警察関係者の証言。「警視庁や各道府県警には応援に向かう被災地が指定されています。震災直後は行方不明者の捜索などに忙殺されていましたが、震災から3カ月以上経った現在、することと言えば交通整理と夜間警備くらいですね。交通整理はともかくとして、夜間警備となると土地勘がないものですから、一体どこまで効果があるのか正直分かりません。制服を着て歩いているのである程度の防犯効果はあると思いますが……。

しかし、割り当てられた人数が果たして適切な人員かと問われると、ちょっと疑問ですね。まぁ、上の判断なので我々に選択肢はありませんが」。

また消防隊員は「震災直後は瓦礫の下敷きになっている人たちの救出に当たりました。それなりに被災地の皆さんの役に立てたという自負はあります。大体7月ごろまで派遣を予定されているのですが、もう震災から100日以上経過しているので、これ以上人員を派遣することに何の意味があるのか……。今は遺体の捜索などは自衛隊が主力ですので、我々を投入するよりも彼らを投入したほうがさまざまな面で有効だと思いますよ」と話す。

現在、被災地の市町村教育委員会の委員が被災したり行方不明になったりと、行政面での人員不足が指摘されている。そのため「専門分野を持つ職員の派遣が必要」という声も出ているが、派遣された自治体職員も困惑の様子を隠せない。

ある自治体職員は以下のように語る。「行政運営に支障が出ているのは聞かされていましたが、いきなり『他自治体の行政を担当しろ』と言われても無理がありますよ。そもそも資料が被災で紛失するなどして何が必要なのかも分からないですし、こうした混乱の中で何が必要なのかの把握さえできない。情報が一元化されていないので、手探り状態です」。

被災地で活動するボランティア団体のメンバーは「他の自治体から職員が来ていますが、やることは炊き出しの手伝いなどです。ゴールデンウイーク後、ボランティアの人数は激減したので助かっている部分はありますが、それよりも被災地ボランティアの経験を持つ人間の数を増やしてほしいですよ」と言う。

被災から3か月以上経過し、復興庁の創立を求める意見が多く出ている。しかし、永田町を見れば権力闘争に忙しく、それどころではないようだ。

関連キーワード

トピックス

大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
大日向開拓地のキャベツ畑を訪問された上皇ご夫妻(2024年8月、長野県軽井沢町)
美智子さま、葛藤の戦後80年の夏 上皇さまの体調不安で軽井沢でのご静養は微妙な状況に 大戦の記憶を刻んだ土地への祈りの旅も叶わぬ可能性も
女性セブン
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー役を務める稲垣吾郎
《ハリー・ポッター役が話題》稲垣吾郎、今も開花し続ける魅力 50代超えても“変わらないルックス”、嵐・櫻井とはワイン飲みながら“昔話”、共演者からは「人間じゃなくてバンパイア」評も出る
NEWSポストセブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン
犯行の理由は「〈あいつウザい〉などのメッセージに腹を立てたから」だという
【新証言】「右手の“ククリナイフ”をタオルで隠し…」犯行数日前に見せた山下市郎容疑者の不審な行動と後輩への“オラつきエピソード”《浜松市・ガールズバー店員刺殺事件》
NEWSポストセブン
那須で静養された愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《「愛子天皇」に真っ向から“NO”》戦後の皇室が築いた象徴天皇制を否定する参政党が躍進、皇室典範改正の議論は「振り出しに戻りかねない」状況 
女性セブン
女優の真木よう子と、事実婚のパートナーである俳優・葛飾心(インスタグラムより)
《事実婚のパートナー》「全方向美少年〜」真木よう子、第2子の父親は16歳下俳優・葛飾心(26) 岩盤浴デートで“匂わせ”撮影のラブラブ過去
NEWSポストセブン
お気に入りの服を“鬼リピ”中の佳子さま(共同通信)
《佳子さまが“鬼リピ”されているファッション》御殿場でまた“水玉ワンピース”をご着用…「まさに等身大」と専門家が愛用ブランドを絶賛する理由
NEWSポストセブン
筑波大学で学生生活を送る悠仁さま(時事通信フォト)
【悠仁さま通学の筑波大学で異変】トイレ大改修計画の真相 発注規模は「3500万円未満」…大学は「在籍とは関係ない」と回答
NEWSポストセブン
2025年7月場所
名古屋場所「溜席の着物美人」がピンクワンピースで登場 「暑いですから…」「新会場はクーラーがよく効いている」 千秋楽は「ブルーの着物で観戦予定」と明かす
NEWSポストセブン