ビジネス

「住宅ローンでマイホーム購入」がいかにハイリスクかを解説

 経済的な側面から見れば、人生のポートフォリオは、自ら働いてお金を稼ぐ「人的資本」と不動産や預貯金などの「金融資本」で構成されている。しかし、現代日本人の金融資本は、その大半を不動産が占めているのが現状だ。資産運用の観点から見たマイホーム購入のリスクについて、資産運用や人生設計についての多数の著書で知られる作家・橘玲氏が解説する。

 * * *
 戦後の日本社会において、人生設計の最適なポートフォリオは、大きな会社に就職し、住宅ローンを借りてマイホームを購入し、定年まで勤め上げた後は退職金と年金で悠々自適の生活を送ることだとされてきた。

 ところが、どうだろう。

 日本人の資産運用は預貯金が大半だといわれるが、実際には、その「金融資本」のほとんどは不動産に集中している。年収の何倍にも及ぶ住宅ローンを組んでマイホームを買うことは、レバレッジ(てこの原理)をかけて不動産に投資するのと同じだから、これは要するに不動産の信用取引だ。

 バブルが崩壊した1990年代以降、地価の下落傾向に歯止めはかかっていない。それにもかかわらず、多くの日本人は「土地神話」を信じて、不動産を所有することのリスクから目をそむけてきた。

 経済学的に考えれば、持ち家と賃貸の違いは不動産投資のリスクを負うかどうかだ。今回の震災では家ごと津波で流されたり、原発からの放射能汚染で避難区域に指定されたり、首都圏・湾岸エリアの埋立地では液状化に見舞われるなど、想像すらできないことが現実のものとなった。余震のたびに大きく揺れるオール電化の超高層マンションが敬遠され、価値が大幅に下落しているともいう。今回の震災は、マイホームという不動産投資のリスクを顕在化させたのだ。

 ところが賃貸なら、こうした不動産のリスクをすべて大家に転嫁できる。地震や津波で家がなくなっても、契約を打ち切って別のところに住み替えればいいだけだ。

 これに対してマイホームは、資産運用の観点から見れば、卵をひとつのカゴに盛っているようなものだ。不動産は価格変動の大きい投資商品で、それにリスク耐性の低い個人が金融資産のすべてを投じ、さらには住宅ローンでレバレッジまでかけて投資リスクを極大化している。それが今でも、「安全で有利」な資産運用だと信じられているのだ。

※マネーポスト2011年7月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン