ライフ

目に見えない放射線 人工霧を駆使して家庭で観察する方法

放射線観察の実験に挑戦する中田有紀さん

 台風一過、待望の夏休みシーズン突入!……というわけで思い出すのが小学校時代の夏休みの自由研究だが、いま「大人の自由研究」が話題になっている。どこにでもあるもので手軽に科学の威力を実感でき、しかも子供に「すごい!」といわせる優れもの。その中のひとつとして、『大人のワクワク実験 アウトドア編』(小学館)にも収録されている「隣の放射線ウオッチング」にチャレンジしてみよう。連日連夜、「放射線量」が世間を騒がせている。そんな目に見えない物体を、人工霧を駆使して、自宅で大胆にも観察してしまおうという実験だ!

 * * *
 ところで冒頭から大いなる疑問なのだが、目に見えない「放射線」をどうやって見るのだろうか? 『大人のワクワク実験』の著者で東京学芸大学附属高校教諭の岩藤英司先生は、「まず、目に見えない放射線を見えるようにする装置『霧箱』を作ります。簡単ではありませんが、中学生以上でしたら十分作ることが可能だと思います」という。

【材料】
■プラスティック製容器■ドライアイス■エタノール■黒いビニールテープ■黒いアルミ板■スポンジテープ(隙間テープ)■LED懐中電灯■ランタンのマントル(ランタンを発光させるために必要な化学繊維でできた袋)■スポイト■軍手■クリップ■金槌■新聞紙■はさみ■透明なボウル

【実験方法】
【1】まずは観察用「霧箱」をつくる。プラスティック製容器の底の部分、縁の内側に沿って隙間テープを貼っていく。
【2】容器の円形に沿って、黒いアルミ板をハサミで切り抜く。
【3】切り抜いたアルミ板の中央に、90度に曲げたクリップを黒いビニールテープで貼りつける。
【4】ランタンのマントルを2cm四方に切り取り、【3】のクリップに固定する。
【5】容器の周辺に貼りつけておいた隙間テープにスポイトを使ってエタノールを沁み込ませていく。
【6】切り抜いておいたアルミ板でプラスチック容器の上に蓋をする。
【7】蓋を黒いビニールテープでしっかりと留める。これで観察用装置「霧箱」は完成。

 続いてドライアイス。その際はまずはさておき「軍手」を着用する。
【8】ドライアイスを新聞紙でくるみ金槌で叩いて粉々に砕く。
【9】ドライアイスの粉をボウルに敷き詰め作った「霧箱」を黒い面を下にして置く。これで「放射線」観察のセッティングは完了。

 観察は暗い室内が最適。明るいと放射線は良く見えない。容器の側面からLED懐中電灯で「霧箱」を照らしてみよう。するとマントルの中心から細く延びていく何本かの白いラインが見えるはずだ。これが放射線が通った跡なのだ。

「今回の実験は、ジェット機が飛んだ後にできる、飛行機雲と同じ原理を利用しています。放射線は目に見えません。けれど飛行機雲のように、その軌跡を視認することは可能ではないか? という発想です」(前出・岩藤先生)

 岩藤先生によると、「霧箱」の原理はこうだ。霧箱上部のスポンジに沁み込ませたエタノール(アルコール)が蒸発(気化)し、下層部はドライアイスでキンキンに冷やさている。その結果、霧箱の下部分にアルコールの飽和状態が出来あがる。

 霧箱の中心においたマントルには「トリウム」という放射性物質が含まれる(全く人体には影響がないレベル)。マントル片から出た放射線は、容器内の空気の分子と衝突しながら進んでいく。分子は衝突した拍子に電子をはじき出し、この電子はイオンとなる。するとイオンに気体となったアルコールが集まってくる。イオンを核とした集合体――これが、飛行機雲のような霧の線として見えるのだという。

 う~ん、分かったような分からないような?

 とはいえ、今回の実験はかなり高度。エタノールが漏れ出したり、ドライアイスの冷やしすぎで霧が発生しないケースもある。ただ、失敗を繰り返しながら自ら工夫して遊び方を進化させていくのも「科学実験」の醍醐味。エタノールとドライアイスの取り扱いには十分注意して、根気よくチャレンジしてほしい。

撮影■太田真三

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン