ライフ

阪神被災者「被災地で歌が力になるのは衣食住が揃ってから」

<地震にも負けない 強い心をもって 亡くなった方々のぶんも 毎日を大切に生きてゆこう>

 静かで優しいメロディーとともに、こんな歌詞で始まる『しあわせ運べるように』という歌が、いま被災地に広がり、復興に向かう人たちの心の支えになっている。歌が生まれたのは、いまから16年前の阪神・淡路大震災のときだった。作詞・作曲したのは、神戸市内の小学校で音楽専科教諭を務める臼井真さん(50)。

 阪神・淡路大震災で臼井さんの自宅は全壊。2週間後、身を寄せていた親戚の家で、変わり果てた街の姿をニュースで見てショックを受け、この曲を作詞・作曲した。以来、歌は神戸市内で広まり、「復興の歌」として学校を中心に歌い継がれてきた。その歌が、いま東日本大震災の被災地の学校でも歌われているという。

「実は東日本大震災が起こった直後から、『しあわせ運べるように』を届けたいという連絡をさまざまなかたから受けました。インターネットでどんどん送ろうとしたり、歌を録音して送ったり…。レコーディングや歌うことを希望される歌手のかたもいらっしゃいました。でも、私は『ちょっと待ってください』とお伝えしました」(臼井さん)

 もちろん臼井さんにも、いますぐ被災地の力になりたいという強い思いがあった。しかし、自分の被災経験から、「まだ歌を贈る時期じゃない」と思った。

「震災直後の避難所では、食べるものが充分でなく、寝ることやトイレに行くことにも気を使う。そのような状況では、かえって“歌なんて歌っている場合じゃない”と逆効果になりかねません。やはり、衣食住が行き渡って、みなさんが復興に向かって歩みだそうとするときにはじめて、歌が力になると思ったんです」(臼井さん)

 臼井さんは、被災地のために自分ができることは何か、という問いに真摯に向き合った。答えは「被災者のかたがたから求められたときに惜しみなく歌を届けよう」というものだった。

 震災から2か月がたったころ、被災地では臼井さんの歌が口コミで広まるようになっていた。5月21日には、宮城県塩竈市で開かれた地元高校合唱部によるチャリティーコンサートで歌われ、神戸市内の学校と交流がある仙台市の八軒中学校吹奏楽部・合唱部の生徒たちも歌うことになった。被災地のラジオでも流されるなど、歌は東北の地に広まっていった。いまこそ歌が必要だと感じていた臼井さんは6月4日、自らも被災地に足を運んだ。

「八軒中学校吹奏楽部・合唱部がぼくの歌も含む復興ソングをCDにレコーディングすることになり、“どういう思いで作られたのか、聞かせていただきたい”というお話があったので。被災地の思いはひとつだということ、そして何十万という神戸の子供たちが、16年間ずっと大事に歌い継いできた歌なので、そういう気持ちで歌ってほしいと伝えました」(臼井さん)

 臼井さんは、7月には自らも『しあわせ運べるように』をCDブックとして発売(アスコム刊、公式サイトhttp: //shiawasehakoberuyouni.jp/contact.html)。書籍とCDの印税は全額、復興のために寄付するという。

※女性セブン2011年8月11日号

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン