ライフ

「マジメに医療をしていても逮捕されるのか」と産科医減少

「出産難民」あるいは「お産難民」といった言葉が生まれるほどに、出産をしたくてもその地域に出産できる産婦人科や出産施設がないといった現状があるという。少子化に拍車をかけるようなこの深刻な事態について、産科医・性科学者の宋美玄さんと医療ジャーナリストの熊田梨恵さんが語る。

 * * *
宋:実は日本の中から次々と産婦人科が消えていて、日本の産婦人科医療は崩壊寸前なんです。読者のかたでも、妊娠した人が「産む場所がない」とかいうてる話、聞いたことあるんやないかと思います。

熊田:妊娠反応が出てすぐに産院に行っても出産の予約が取れないとか、聞きますね。

宋:ザラですわ…地方には産婦人科医がそもそもいない地域もあるんですけど、実は神奈川県や埼玉県なんかの都市部もかなり深刻な状況です。産める場所がないから、里帰り出産しはる人もいる。

熊田:以前産婦人科だったところが、婦人科に鞍替えしていてお産は診てくれなくなったというのもありますね。

宋:議論が高まったのは「大野病院事件」がひとつのきっかけでした。2004年に福島県立大野病院で妊婦が帝王切開手術中に死亡して、執刀医が業務上過失致死などで逮捕された事件です。妊婦さんはベテランの産婦人科医でも一生の間に1、2回しか遭遇しないといわれるほどの難しい胎盤の病気を抱えてはったうえに、当時病院には産婦人科医師がひとりしかいなかった。患者さんが亡くなってしまったことは、どんな事例であれ本当につらいことですが、「マジメに医療をしていても逮捕されるのか」といって、私の知り合いの産科医も辞めていきました…。

熊田:日本の医療の歴史に残る事件でしたね。被告は4年後に無罪になりましたけど、当初、表面的な報道だけが大きく流れて、「医者が医療事故で患者を殺して捕まった」という間違ったイメージも流布したと思います。

宋:どんなに健康な女性でも、妊娠すれば一定の割合で、予測できない母児死亡などの不幸な出来事が起こる可能性はあるんです。大野病院事件でも、医療者からすれば被告の先生は精一杯の医療をされていたとわかる。どれほど手だてを尽くしても医療に100%の安全・安心はないんですよね。不幸なことが起こるたびに医者が逮捕されたら、誰も医者なんて辞めてしまいます。

※女性セブン2011年9月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(HP/時事通信フォト)
「私嫌われてる?」3年間離婚を隠し通した元アイドルの穴井夕子、破局後も元夫のプロゴルファーとの“円満”をアピールし続けた理由
NEWSポストセブン
小野田紀美・参議院議員(HPより)
《片山さつきおそろスーツ入閣》「金もリアルな男にも興味なし」“2次元”愛する小野田紀美経済安保相の“数少ない落とし穴”とは「推しはアンジェリークのオスカー」
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン
記者会見を終え、財務省の個人向け国債のイメージキャラクター「個子ちゃん」の人形を手に撮影に応じる片山さつき財務相(時事通信フォト)
《つけまも愛用》「アンチエイジングは政治家のポリシー」と語る片山さつき財務大臣はなぜ数十年も「聖子ちゃんカット」を続けるのか 臨床心理士が指摘する政治家としてのデメリット
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(時事通信フォト)
「濡れ髪にタオルを巻いて…」森下千里氏が新人候補時代に披露した“入浴施設ですっぴん!”の衝撃【環境大臣政務官に就任】
NEWSポストセブン
aespaのジゼルが着用したドレスに批判が殺到した(時事通信フォト)
aespa・ジゼルの“チラ見え黒ドレス”に「不適切なのでは?」の声が集まる 韓国・乳がん啓発のイベント主催者が“チャリティ装ったセレブパーティー”批判受け謝罪
NEWSポストセブン
高橋藍の帰国を待ち侘びた人は多い(左は共同通信、右は河北のインスタグラムより)
《イタリアから帰ってこなければ…》高橋藍の“帰国直後”にセクシー女優・河北彩伽が予告していた「バレープレイ動画」、uka.との「本命交際」報道も
NEWSポストセブン
歓喜の美酒に酔った真美子さんと大谷
《帰りは妻の運転で》大谷翔平、歴史に名を刻んだリーグ優勝の夜 夫人会メンバーがVIPルームでシャンパングラスを傾ける中、真美子さんは「運転があるので」と飲まず 
女性セブン
安達祐実と元夫でカメラマンの桑島智輝氏
《ばっちりメイクで元夫のカメラマンと…》安達祐実が新恋人とのデート前日に訪れた「2人きりのランチ」“ビジュ爆デニムコーデ”の親密距離感
NEWSポストセブン
イベントの“ドタキャン”が続いている米倉涼子
「押収されたブツを指さして撮影に応じ…」「ゲッソリと痩せて取り調べに通う日々」米倉涼子に“マトリがガサ入れ”報道、ドタキャン連発「空白の2か月」の真相
NEWSポストセブン
元従業員が、ガールズバーの”独特ルール”を明かした(左・飲食店紹介サイトより)
《大きい瞳で上目遣い…ガルバ写真入手》「『ブスでなにもできないくせに』と…」“美人ガルバ店員”田野和彩容疑者(21)の“陰湿イジメ”と”オラオラ営業
NEWSポストセブン