国内

元首相「権力を二の次にして政策に生きる政治家はいない」

 新聞を読んでいると、「政策論争」という単語を目にすることがある。この言い回しに込められた意味は一体なんなのか。東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。

 * * *
 選挙のたびに新聞が訴えるのは「数合わせよりも政策論争を」という主張だ。今回の民主党代表選では「政策論争にかじを切れ」(8月24日付、朝日新聞社説)、「民主は代表選で政策論議を深め出直せ」(同23日付、日本経済新聞社説)といった具合である。

 これは、たしかにそのとおりだ。国民が政治に求めるのは権力闘争ではなく、政策の実行である。肝心の政策がないがしろにされてはたまらない。

 ところが毎回、指摘されながら政策論争はいっこうに深まらない。とりわけ今回はひどかった。告示から投開票まで2日しかなかったのだから、むしろ議論を避けたとさえ言える。

 なぜ政策論争が深まらないのか。それは日程が真の理由ではない。そもそも多くの政治家は初めから「政策で戦っていない」のである。こう言ってしまうと身も蓋もないが、残念ながら本当だ。私はある内閣総理大臣経験者にずばり聞いたことがある。

「私たち外野は政治家を政策で判断するけど、肝心の政治家は政策で生きているのでしょうか」

 すると返事はこうだった。

「長谷川さん。9割くらいの政治家は権力に吸い寄せられていく。『権力を二の次にして政策に生きる政治家』というのは、まずいませんね」

 これが実態である。

 だから「政策論争を深めよ」という主張はいささかナイーブで、もう一歩、本質に迫っていない。

※週刊ポスト2011年9月16・23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト