国内

【女子アナ復興日記2】被災者の心の復興支える手芸セット

早坂まき子アナの女子アナ復興日記2

元仙台放送アナウンサーで震災直後の取材にあたり、現在は東京でフリーアナとして活躍する早坂まき子氏が考える連載「震災のあと」。第二回は、コミュニケーションの復興を伝える。

* * *
仙台在住時から交流のある、宮城県名取市のとある女性から6月末にメールが入りました。

「もし使用していないソーイングセットがあったら、送ってくれないかしら……」

この女性は地元で、避難所での食事準備や配膳、地域の人たちへの声掛けなど個人的にボランティア活動をされている方です。私が仙台放送入社1年目に楽天イーグルスの取材中に、お嬢さんたちと球場で応援に来られていたこの方と出会いました。

その後もメールなどで駆け出しアナの私を励まし続けてくれた元気なお母さんです。震災後も私に貴重な現地の状況を教えてくれます。

ソーイングセットのメールをもらったときは「避難所や仮設住宅暮らしの方たちが洋服のお直しをしたいのだろうな」と思いました。確かにその使い道でもありましたが、もう一つは「コミュニケーションを図るため」でもありました。

私が現在司会をさせていただいているボランティア番組で、出演するボランティアの方が必ず口にするのが「被災者を一人にさせない」です。

9月になり、避難所が閉鎖される所が増えて、仮設住宅、もしくは自宅避難者の方が多くなりました。宮城県だけでも5月に406あった避難所が、8月末時点で172か所にまで減少。名取市の避難所は9月には全閉鎖されています。

それは復興への一歩であることはまちがいないのですが、それまで避難所では「○○町※丁目」など地域ごとに避難生活をしていた方たちが、バラバラの仮設住宅に移ることになるケースが増えているそうです。

すると何が起こるのか? 「隣に誰が住んでいるのかわからない」「どういう人かわからないのでお互い挨拶もしない」という現象が起こってしまうそうです。

都会では同じマンションでも交流がない、という話もよく聞きますが震災前は家族ぐるみでご近所付き合いがあったような地域に住んでいた方にとっては、生活環境がまるで変わってしまうそうです。

さらには「仕事もないから外出しない」「元気がでないからずっと部屋で寝ている」といった現象が起きてしまう。

この問題を解決させるためにいわゆる「茶飲み場所」的存在のコミュニケーションを図れる場所を作ろうと、地元自治体やNPOやNGOのボランティア団体などが精力的に活動しています。夏は足湯コーナーを設けたり、スイカ割りや金魚すくいの出店をだしたりと各仮設住宅で工夫しています。

メールをくれた名取の女性へは、私の友人たちから集めた数種類の針や、糸、マジックテープ、毛糸にミシンなど段ボール三箱を郵送しました。現在はそれらを使い、避難している方、地元の方、ボランティアなどが一ヶ所に集まって「即席手芸教室」が行われているそうです。お喋りしながら気分を和らげ、手先を動かし、交流を図っていく……。女性に人気のコミュニケーション方法です。

時間はかかるかもしれませんが、復興は物質的な衣食住だけではなく人と人とが顔を合わせるがコミュニケーション=「心の復興」も重要だと再認識しました。人に会い、挨拶をする、一言声を掛け合う。この何気ない交流が、仮設住宅生活では意識的に行わないといけないこと自体、いかに被災者の方が不自由で非日常におかれてしまっているかがわかりました。

【プロフィール】

早坂まき子。元仙台放送アナウンサー。六年在籍した仙台放送時代に東日本大震災に遭う。現在フリーアナウンサーとしてJ:COM被災地支援番組『週刊ボランティア情報 みんなのチカラ』司会担当。個人的な被災地支援活動もしながら、長期的にどのような支援が出来るか模索中。



トピックス

国民民主党から参院選比例代表に立候補することに関して記者会見する山尾志桜里元衆院議員。自身の疑惑などについても釈明した(時事通信フォト)
《国民民主党の支持率急落》山尾志桜里氏の公認取り消し騒動で露呈した玉木雄一郎代表の「キョロ充」ぷり 公認候補には「汚物まみれの4人衆」との酷評も出る
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
「松井監督」が意外なほど早く実現する可能性が浮上
【長嶋茂雄さんとの約束が果たされる日】「巨人・松井秀喜監督」早期実現の可能性 渡邉恒雄氏逝去、背番号55が空席…整いつつある状況
週刊ポスト
発見場所となったのはJR大宮駅から2.5キロほど離れた場所に位置するマンション
「短髪の歌舞伎役者みたいな爽やかなイケメンで、優しくて…」知人が証言した頭蓋骨殺人・齋藤純容疑者の“意外な素顔”と一家を襲った“悲劇”《さいたま市》
NEWSポストセブン
6月15日のオリックス対巨人戦で始球式に登板した福森さん(撮影/加藤慶)
「病状は9回2アウトで後がないけど、最後に勝てばいい…」希少がんと戦う甲子園スターを絶望の底から救った「大阪桐蔭からの学び」《オリックス・森がお立ち台で涙》
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン
6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン