芸能

三遊亭きつつき エネルギッシュな高座が魅力の奔放な爆笑派

広瀬和生氏は1960年生まれ、東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。30年来の落語ファンで、年間350回以上の落語会、1500席以上の高座に接する。その広瀬氏が、「素晴らしい」と絶賛するのが三遊亭きつつきである。

* * *
圓楽党の逸材、三遊亭きつつき。このところ僕が熱心に追いかけるようになった若手だ。

1979年生まれ、2003年に三遊亭圓橘に入門して前座名「橘つき」、2006年に二ツ目昇進して「きつつき」と改名。2007年にさがみはら若手落語家選手権で優勝している。

師匠の圓橘は、堅実な芸風で知られる古典の名手。元は三代目三遊亭小圓朝の弟子で、師の没後、五代目圓楽一門に移り、鳳楽・楽太郎(現六代目圓楽)・好楽らと共に「圓楽党の四天王」と称された。

その圓橘に入門したくらいだから、きつつきも堅実な芸風かというと、さにあらず。エネルギッシュな高座が魅力の、奔放な爆笑派だ。古典のテクニックは粗削りだが、とにかく面白い! このまま伸びれば間違いなく現代落語界の最前線で活躍することになる器だ。

きつつきは、「自分の落語の確立」に向かってガムシャラに突き進んでいる。彼の最大の長所は、落語の面白さをとことん追究するアグレッシヴな姿勢だ。自分の世界をしっかり築き、それを全力投球で観客にぶつける。それが出来なければ、自分が落語家である意味が無い……そんな覚悟が高座から伝わってくる。

僕がハッキリと「きつつきは逸材だ!」と認識したのは、ある落語会で『長短』と『棒鱈』を立て続けに観たときだ。

極端に気が長い男(長七)と気が短い男(短七)の会話だけで成り立つ『長短』は、ヘタな演者だとわざとらしさが鼻について全然笑えないが、きつつきは長七と短七の口調が実に自然で、だからこそ両者の対比が際立って新鮮に笑えたし、最後に短七の女房が出てくる独創的な演出にも意表を突かれた。

田舎侍と江戸っ子が喧嘩する『棒鱈』もまた演者を選ぶ難しい噺だが、きつつきは全編オリジナリティ溢れる演出で爆笑を誘う。田舎者の芸者を登場させる『棒鱈』なんて初めて観たが、それは決して小手先のギャグではなく、きちんと噺の本質を踏まえたうえでの「型破り」なのである。だからこそ素晴らしい。

※週刊ポスト2011年11月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ブラジルにある大学の法学部に通うアナ・パウラ・ヴェローゾ・フェルナンデス(Xより)
《ブラジルが震撼した女子大生シリアルキラー》サンドイッチ、コーヒー、ケーキ、煮込み料理、ミルクシェーク…5か月で4人を毒殺した狡猾な手口、殺人依頼の隠語は“卒業論文”
NEWSポストセブン
9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン