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放射能持つ花崗岩使った国会議事堂“ホットスポット”だった

東京都世田谷区の民家で見つかった「放射能ビン」騒動は、当初、“東京ですごいホットスポットが見つかった”と、市民運動家や反原発団体を大騒ぎさせた。

本誌では、市民団体などが騒ぐ程度の“ホットスポット”が珍しいものではないことを証明するため、専門家の助言を得て、原発由来ではなく放射線量の多い場所を探した。計測には、シンチレーションメータ(日立アロカメディカル社製=千代田テクノル提供)を使用した。

まず、街なかに普通にある代表格が花崗岩(かこうがん)である。建材や敷石、墓石などに広く使用されており、「御影石」の別名でも知られる。放射性のカリウム、ラジウム、トリウムなどを含むため、放射能を持つ。

花崗岩が大量に使われている建物として日本で最も有名なのは国会議事堂だろう。あの白亜の外壁は、総花崗岩造りである。

建物から約120m離れた正門前の地上1mで、0.18マイクロシーベルト/時だった(以下、ことわりがない場合、すべて単位は同じ)。

さらに建物に近づき、花崗岩の外壁付近の位置だと、0.29にハネ上がった。これが議事堂内部に入ると0.1に下がる。内装や構造材に使われているコンクリートなどが放射線を遮るからだろう。

東京近辺で各行政機関が公表している空間線量は、地上1mでおよそ0.05~0.06程度である。これが地上5cmだと0.1程度に上がるというデータもあるが、議事堂の例でもわかるように、地面に近いと岩盤や地中の物質の影響を受けやすく、場所によって大きなバラつきがある。

いずれにせよ、一般的な線量の3~5倍で、“高放射線土壌”の周辺並みだから、国会議事堂は立派な“ホットスポット”ということになる。福島県いわき市の市庁舎前が地上1mで0.17程度だから、それより高いわけである。

続いて花崗岩の敷石が美しい銀座のメーンストリート「並木通り」を訪れた。地上1mで0.2前後の場所がいくつもあり、周辺より明らかに高い。近くにある赤御影石のビル壁の前では0.25を検出した。

墓地も調べた。都内最大級の青山霊園では、通路の地上1mで0.1、墓石の近くでは0.13だった。さらに、赤御影石の手洗い場付近では0.2を記録。予想通り、ここも“ホットスポット”だった。

念のためにもう1か所、雑司ヶ谷霊園を調べた。文豪・夏目漱石の墓石近くで0.17と、青山霊園と大きな差はなかった。

やはり花崗岩の影響は大きいようだ。東京での計測結果が花崗岩の影響であることを確認するため、日本有数の御影石産地である愛知県岡崎市に向かった。

採石場に入ることはできなかったが、採石場に面した場所(地上1m)で0.12を計測した。場内はかなり高いことが予想される。比較するため、そこから約2km離れた公園で測ると0.1とわずかに下がった。さらに2kmほど離れた岡崎インターチェンジ近くの駐車場では0.09だった。

この記事の目的は「あちこちが危ない」と訴えることではない。この程度の場所は日本中にあることを示したいだけである。もちろん、岡崎市に住むことや銀座に遊びに行くことが危険なわけでもない。

ただし、今回の計測結果から推測すれば、御影石の採石場で働く従業員は、仕事による被曝が年間1ミリシーベルトを大きく超える可能性が十分あるので、今後、健康調査や防護対策を検討すべきかもしれない。

※週刊ポスト2011年11月4日号

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