国内

暴排条例で海外に拠点移す組織増えると山口組系企業舎弟証言

警察組織と暴力団のせめぎ合いは水面下で激化している。ジャーナリスト・伊藤博敏氏が、暴力団排除条例の全国施行から1か月が経とうとする中で暴力団はどのような対策を取ろうしているのか、その最前線を報告する。

* * *
暴排条例は、暴力団社会を変質させる。なかでも、その影響をモロに受けるのは、縁日などの露天商、「テキ屋の世界」である。

山口組系直系組織の小車誠会が、10月までに山口組を除籍となり、解散したことが明らかになった。テキ屋の最大手で、全国の様々な縁日に関与、仕切ってきた。暴排条例は、暴力団の影が少しでもチラつけば、露店を認めないというのだから存亡の危機であり、暴力団を離れるしかない。もちろん「偽装解散」の疑いは消えないわけだが、暴力団周辺者ではない露天商自身の意識が変わってきている。

千葉県では、9月27日、「反社会的勢力との関係を一切、持たない」と宣言した露天商が集まって、千葉県街商協同組合を設立した。持ちつ持たれつの関係にあった暴力団だが、その存在が生活を脅かすとなれば、バー・クラブなどのサービス業や一般事業会社と同様、関係遮断の覚悟を決めねばならない。

暴力団の敵は、国家権力を背景にした市民になった。

「カタギの衆に迷惑をかけちゃいけない」という“不文律”がある限り、暴力団が市民と面と向かってぶつかり合うことはできない。まして、六代目山口組の篠田建市(通称・司忍)組長は、そうした“伝統”を大事にする気質だという。憂色は濃い。

そうした気持ちの表われか、篠田組長は、『産経新聞』のインタビューに応じ、その内容が10月1日にウェブに掲載された。マスコミとの接触を禁じた山口組のトップが自ら語るなど極めて異例。そのやむにやまれぬ気持ちが、冒頭に凝縮されていた。

〈異様な時代が来たと感じている。やくざといえども、われわれもこの国の住民であり、社会の一員。(中略)われわれにも親がいれば子供もいる、親戚もいる、幼なじみもいる。こうした人たちとお茶を飲んだり、歓談したりするというだけでも周辺者とみなされかねないというのは、やくざは人ではないということなのだろう〉

まさにそうだ。住民サービスも行なわない。借家を追い出し、銀行口座を閉じ、とことん追い詰める。行き着く先は、改姓改名、正体を隠したうえでの「マフィア化」である。

しかも銀行口座を開けないからビジネス活動ができず、もし“偽装”で口座を開いても、バレたら封鎖される。そのリスク回避のために、運用本部やビジネスの拠点を海外に置く事例が増えている。

「山口組と“親戚関係”にある指定暴力団で、マカオに事業総本部を置いたところがあります。語学が達者で各国の税法、刑法、会社法などに強いのがいれば、海外進出はどうとでもなります。まして日本に新たな“ビジネスチャンス”はなく、中国と東南アジアがこれから伸びる。拠点を海外に移す組織が増えるでしょう」(山口組系企業舎弟)

暴排条例の帰結が「暴力団の輸出」というのであれば、諸外国に予想外のハレーションを今後、広げることになるかもしれない。

※SAPIO2011年11月16日号

あわせて読みたい

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン