ライフ

105歳の教育学者「125歳まで生きたら、コロッと逝きたい」

長生きするにはどんな生活をすればいいのか――医学博士・加藤俊徳氏が「奇跡の脳」と絶讃する、教育学者で知的障害児のための通園施設「しいのみ学園」(福岡市)の園長を務める曻地三郎さん(105歳)を取材した。

小誌記者を見るなり、「あなたの身長は何センチ? 180? 僕は歳を取ってから17センチも縮んでしまったけれど、若い頃はあなたと同じくらいの背があったんだよ」と笑う。まずは写真撮影のため、毎朝の日課にしているという「曻地式棒体操」を披露してもらう。「1、2、3、エイッ、エイッ」と声を出しながら、長さ40センチほどの棒を振る、というものだ。一連の動作の中に、股の下を通して棒を片方の手からもう片方の手へと受け渡しする“股通し”があるのだが、その時、片足立ちをしても全くふらつくことがない。105歳という年齢を考えると驚異的だ。

この体操は毎朝、何分やるんですかと聞くと、

「5分ぐらい。小学校などで講演する時に片足立ちをやってみせると、子どもたちが『わぁ~凄い』って歓声を上げるんだ。そうそう、この棒には玉が入っているんだけど、何個かわかる? 答えは4個(本当は2個)。だって、魂(玉4)が入っているから(笑い)」

このようによくジョークをいって大笑いする。

曻地さんは数多くの外国語も勉強してきた。

「今まで勉強したのは英語、ドイツ語、ロシア語、韓国語、中国語、ポルトガル語、フランス語……。中国語は95歳になってからだね。僕の親父は日露戦争の時、中隊長として203高地を攻めた。だから、ロシア語で親父が話していたのはロシア人の悪口ばかり(笑い)」

曻地さんが日頃から心掛けていることのひとつが、食事の摂り方。栄養バランスの取れた献立の食事を腹8分目程度摂り、ひと口30回噛むむようにしている。この「摂取量を抑制する」ことと「よく咀嚼する」という習慣は、今年100歳になった現役の医師・日野原重明氏(聖路加国際病院理事長)も実行していることだ。

そのおかげで、日野原氏は20歳の頃から今日まで体重は常に60~65キロの間に収まっている。ちなみに日野原氏は曻地さんのことを「私の手本」と話している。

元九州大学教授で現ブックスクリニック福岡の機能神経外科主幹の島史雄氏も咀嚼の重要性をこう解説する。

「よく咀嚼することで満腹感が生まれるので、摂取カロリーを制限できるんです。また、良質な栄養分が全身と脳によく吸収され、知覚や聴覚を司る脳幹網様体も活性化し、脳全体の活力が増します」

何歳まで生きたいか尋ねてみた。

「カルマンさん(故人・世界最高齢)が122歳だから、125歳まで生きたいな。まだまだ大丈夫だけど、死ぬ時はコロッと逝きたいね」

取材の最後に曻地さんに、加藤氏に脳のMRI画像を診断してもらった時(2004年)のことを聞くと、しっかりと記憶していた。

「加藤先生は僕の脳を見て30代の人と一緒だっていっていたな。『先生、機械が間違うとるんやないのか』っていっちゃった。加藤先生が『どうやって脳を鍛えているんですか』って聞くから、『歴史は夜作られる』って答えた(笑い)」

このユーモア精神こそが長寿の最大の秘訣なのかもしれない。

※週刊ポスト2011年11月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン