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TPP首相会見に「ホッとした」山田前農水相に“腰砕け”評

永田町用語は独特だ。ところが、サラリーマンが使っても意外な効果を発揮する場合がある。「ガス抜き」もその一つである。その単語について東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。

* * *
社内で賛否両論が盛り上がったとき、どう議論を収めて当初の目的を達成するか。そんなテクニックの一つとして覚えていて損はない。

まず永田町では、どう使われるか。次のような記事がある。

「自公など野党は、TPP交渉への参加方針について野田佳彦首相が『関係国との協議』を前面に出したことに対し、『民主党内のガス抜きを狙ったものだ』などと批判を強めた」(朝日新聞、11月12日付朝刊)

反対意見が盛り上がっているとき無理矢理、賛成意見でとりまとめようとすると、会議が紛糾して立ち往生してしまう。あるいは後にしこりを残す。そんなとき政治の場で使われる常套手段がガス抜きなのだ。

あたかも爆発寸前に膨らんだ風船のガスを抜いて、中の圧力を減らすように、反対派に言わせるだけ言わせてしまう。それで最後に形だけ妥協すれば、反対派の勢いがそがれて、賛成派の目論見通りになる。

今回、野田は党内論議を尽くした後、当初の決定を1日だけ遅らせた。国会審議で野党が首相を追及したが、抵抗はそこまで。反対派は野田の記者会見を見守るしかなく「関係国と協議に入る」という野田の発言をとらえて「事前協議にとどまった。ホッとした」(山田正彦前農林水産相)と評価するありさまだ。完全に腰砕けである。

いくら反対が強くても、中身が同じ反対論を同じ勢いのまま維持するのは難しい。二度三度と繰り返していくうちに「それはもう聞いた」とみんながシラケていくからだ。

そこで、まず相手に全部言わせてしまう。次にちょっと間をおく。「もう言いたいことはないか」と見切ったところで、少し形を変えた当初方針をがつんと出す。これがガス抜きの極意である。

※週刊ポスト2011年12月2日号

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