2011年10月に1ドル=75円32銭という史上最高値を更新した日本円。まだまだ円高に歯止めがかかったと考える人は少ないかもしれない。しかし、そのタイミングでドルを買い下がっていたのが、FX(外国為替証拠金取引)で8億円を稼いだカリスマトレーダー・池辺雪子氏だ。池辺氏のトレードの根拠を聞いてみよう。
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よく為替は一方向に動きやすいといわれるが、だからといってトレンドに従った“順張り”トレードだけで、FXで大きく儲けることはできない。大きなトレンドが反転する時の“逆張り”に成功すれば、その後の利益は順張り時よりも大きなものとなるだろう。
実際私も、過去に大きく円高に動いたときは、トレンドに反していても豪ドルなどの高金利通貨を仕込むようにしてきた。FXは為替差益で儲けるだけでなく、通貨間の金利差であるスワップポイントによっても利益が積み上がる。そのときのポジションが、後のトレンド転換によって大きな利益を生んだ。
つい先日も、こうした大きなトレンド転換時の“逆張り”を狙うトレードを行なった。2011年10月31日に行なわれた、政府・日銀による円売り介入前に円が対米ドルで、連日最高値を更新していたとき、私は米ドルを買い下がっていったのだ。
そのとき、私のファンクラブの会員の方々からは、「どうトレードすればいいですか?」という質問を受けていて、買い下がることをアドバイスしていた。しかし、円が勢いよく上昇するのを目の当たりにして、なかなか手が出せなかった会員も多かったようだ。
その後は円売り介入の効果でドルは反発し、ドルの買い下がりは成功したわけだが、私は別に介入を予想してトレードしていたわけではない。あくまでチャート分析の結果、1ドル=75円台でドルがいったんは反発すると予想していたのである。
そのため、76円台からドルを買い始め、75円台では買い増しをした。もし、74円台に入っていたら、さらに買っていたと思う。74円台はオーバーシュートだと考えていたからだ。
このように、普段からテクニカル、主にチャートの分析をし、相場の節目をあらかじめ把握していれば、相場が大きく動いたときに実際にトレードすることができる。
あの2011年の「9.11」同時多発テロのときも、とんでもないスピードで円高が進んだ。そのとき、私は日頃のチャート分析から、そろそろドルが底を打つレベルに来たと見てドルを買おうとしたのだが、当時取引していたFX会社の担当の人は、「やめた方がいいですよ」といって私の注文を受けなかったことがあった(当時のFXは、電話取引が中心だった)。
その後、私の予想通りドル/円は大きく反発したわけだが、相場激変時は業者の人でもトレードを躊躇する。先日の1ドル=75円台の円高時、再びこのエピソードを再び思い出してしまった。
相場が大きく動いたときほど、大きな利益を上げるチャンスである。しかし、大きく動くときほどなかなか手が出ない。そんなときのトレードを後押しするのが、日頃のチャート分析による予想なのである。
私は、2011年10月31日の為替介入直前につけた円の最高値、1ドル=75円台前半が、当面の円の天井になる可能性が高い、と考えている。
2011年後半の短期的な円高トレンドの起点は、8月に行なわれた円売り介入後のドルの高値である80円台前半。それまで、東日本大震災以降では、短期的に2回の円高トレンドがあり、前2回の円高の値幅はいずれも5円強。その値幅を3回目の今回に当てはめると円の高値は75円前後となる。だからこそ、私はドルを買い下がったわけである。
また、介入によって75円台から79円台までドルが一気に上昇したが、それまでは8月前半から76~78円のレンジ取引が続いていた。相場格言に、「天井3日、底100日」というものがあるが、介入によって8月初めからの底ばい状態が、チャート的にはいったん上放れた格好となっている。
※マネーポスト2012年新春号