ライフ

『食べログ』やらせ問題の迷惑 ホメるのが難しい世の中になる

大人力コラムニスト・石原壮一郎氏の「ニュースから学ぶ大人力」。今回はやらせ業者の存在が明るみになった「食べログ」問題から、「2012年のほめ方」を考えます。

* * *  
新年早々、大きな話題になっているのが「『食べログ』やらせ問題」です。「食べログ」といえば、多くの人がデートや飲み会の店を探すときに重宝している飲食店の人気ランキングサイト。

ところが、サイト内での順位や評価を上げるために、特定の飲食店と契約して、好意的な口コミの投稿を請け負う業者がゾロゾロ存在していました。運営するカカクコムの発表によると、昨年末までに39業者が確認されたとか。

そういった「やらせ」の噂は前々からあったし、そもそもネットの情報は眉に唾をつけながら見るのが大前提ではあります。しかし、「食べログ」は「善良な市民からの本音」を集めているというのがウリであり、そのランキングは大きな影響力を持っていました。

今後、どういう対策を取っていくのか、はたしてやらせを根絶することはできるのか、悪評高いAmazonのレビューなどにも問題が波及するのか、いろいろ興味深いところです。

今回の件で、もっとも大きな痛手をこうむったのは、やらせとは無縁で、自力で高い評価を得ていた飲食店かも。ユーザーはしばらくのあいだ、高い評価の飲食店に対しては反射的に「ここも、やらせをやっていたのでは?」という目を向けそうです。

また、お客が本気で感激して絶賛の書き込みをしても、お店としては「う、うれしいけど、頼んで書いてもらっていると思われたらどうしよう……」とヒヤヒヤせずにはいられません。

おそらく、コトは「食べログ」の中だけにとどまらないはず。2012年の日本は、ホメるのが難しい世の中になるでしょう。「あの課長さん、どういう人?」と尋ねられて、「いやもう、立派な人格者で仕事もできて」と手ばなしでホメたら、相手は心の中で「お前は『食べログ』のやらせ業者か!」と突っ込んで、むしろウソ臭く響きそうです。

気に入った飲食店を勧めるときは、なおさらのこと。お互いに今回の件を連想して、本気なのにウソ臭い会話にならざるを得ません。まったく、迷惑な話です。

しかし、困難な状況を逆手に取って利用してしまうのが大人のしたたかさ。本気で人やモノやお店をホメたいときには「一銭ももらっていない私が言うんだから、間違いありません」とか「ここまで言うとまるでやらせみたいですが、本気でそう思います」といったフレーズを付けて、しゃれっ気をにじませつつ信憑性を増幅しましょう。

きっと当の「食べログ」の口コミ欄でも、しばらくのあいだこういう言い方が流行るに違いありません。ちなみに、利害関係があって無理にホメているケースでも、大いに活用できます。

あるいは、さんざんホメたあとで「ホメっぱなしだと、どっかのやらせみたいなので」と前置きしつつ、当たり障りのないマイナス情報を織り交ぜれば、本音をぶつけ合ったような深い情報をやり取りしたような気になれるでしょう。ちなみにこちらの手法も、無理にホメなければならないときに使うと、さらに真価を発揮します。

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン