国内

平田信容疑者の顔 警察官が同一人物と判断できなかった理由

いくら17年の歳月が経ったからといって、出頭してきた平田信容疑者を、警視庁の機動隊員も、丸の内署の警察官も見分けられなかったことは驚きだ。警視庁や警察官はそれを仕事にしているプロのはずなのに、いったいなぜ、同一人物と判断できなかったのか。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が考察する。

* * *
大晦日に出頭してきた平田信容疑者。警視庁の機動隊員は「手配写真と印象が違う」と感じ、「いたずら」と思い込んで取り合わなかったとか。髪が長く茶色で顔もふっくらしていたので別人だと思い込んだそうです。

その後、丸の内署に移動したら、そこでも警察官に「うそ」と言われ、指紋をとられてやっと身元が確認され逮捕された--。まさしく嘘のような本当の話に、こっちがびっくりさせられました。

いくら17年の歳月が経ったからといって、手配写真の相手を見分けることができないとは驚きです。警視庁や警察官はそれを仕事にしている、プロのはずなのに。素人からすると、「いったいなぜ、同一人物と判断できなかったのか」、理由を知りたくなります。

そういえばしばらく前、「犯人の似顔絵」をめぐって、ある出来事が話題になりました。
誘拐された子どもたちの「視覚」の記憶から作られた「似顔絵」が、犯人逮捕の決定的な手がかりとなったという出来事です。

誘拐された七歳の少女は、犯人の顔を詳細に覚えていた。色白でめがねをかけ、歯が一本欠けていたなど、鮮明なディテイルの記憶をもとに似顔絵が作られ、犯人逮捕となりました。七歳の少年が誘拐された際も、同じく詳細な似顔絵が手がかりとなって容疑者が逮捕されることに。そんな事件が続きました。

いったいなぜ、子どもたちの記憶から作られた似顔絵は正確なのか? 子どもは網膜に映った映像をそのままダイレクトに覚えているという傾向があります。子どもは「場面をそのまま鮮明に記憶する」力が強い。

それに対して、大人は見たものに自分なりの意味や解釈を加えてしまう傾向がある。「外部から『こうだったのでは?』と情報を入れられても、子どもは『違う』とはっきり否定できる。一方、大人は『そう言われればそうだったかも』などと、あやふやになってしまう」という専門家のコメントが新聞に載りました。

あなたが1時間前に会った相手の顔は? 顔の輪郭は角張っていたか。鼻の形は。目の形は。そう尋ねられてもなかなかすらすらとは答えられません。

それよりも、何歳くらいで労働者風とかサラリーマン風とか、都会的だとか野暮だとか、その人の社会的背景などを勝手に解釈し意味づけしてしまう。そうした印象を抱くことによって、ますますリアルな観察力は低下し、部分・パーツの具体的な形体を捉えることが難しくなる、ということでしょう。

大人の視覚は、社会的な意味や価値観に必要以上に引きずられる。「勝手な自己解釈に浸食されて濁っている目」とも言えるかもしれません。それに対して、子どもは「ありのままに見ることができる純粋な目」を持つ、と言えるのではないでしょうか。

平田容疑者の顔には整形された痕跡が無かったそうです。17年前と今で、目の形も鼻の形も顔の輪郭も変化は無い。もし、子どもたちの目が検証していたら? あっという間に同一人物だと判断していた可能性があります。

こうなったら、子供向け職業体験テーマパーク「キッザニア」にいる子ども警官たちに、指名手配者の検挙を手伝ってもらうのはいかがでしょう? プロの警官より、よほど効率的かもしれません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

筑波大学で学生生活を送る悠仁さま(時事通信フォト)
【悠仁さま通学の筑波大学で異変】トイレ大改修計画の真相 発注規模は「3500万円未満」…大学は「在籍とは関係ない」と回答
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
《佳子さま盗撮騒動その後》宮内庁は「現時点で対応は考えておりません」…打つ手なし状態、カレンダー発売にも見える佳子さまの“絶大な人気ぶり”
NEWSポストセブン
監禁暴行の被害女性はW不倫の相手と別れ話で揉めていた(写真提供/イメージマート)
《ベテラン刑事が振り返る仰天事件》幼い娘2人を放置し…不倫相手に溺れた末、DVから逃げて警察署へ駆け込んだ母親 子供を保護した警察官へ放った「私は母である前に女なんです」
NEWSポストセブン
空いている電車内で居眠りしていた様子を盗撮され、一方的に非難する字幕とともにSNS投稿された(写真提供/イメージマート)
《SNSへの勝手なさらし被害》障がい者の家族がいる女性が専用スペースに車を駐車したところ…「不正利用」と決めつけられ”言い合い”の動画が拡散
NEWSポストセブン
中国が台湾侵攻を決断したらロシアが呼応する可能性も(習近平主席/EPA=時事)
《EU国防委員らが警告》2027年はロシアと中国の同時侵攻が現実化する「最も危険な瞬間」、中国の台湾侵攻にロシアが呼応する可能性
NEWSポストセブン
2025年7月場所
名古屋場所「溜席の着物美人」がピンクワンピースで登場 「暑いですから…」「新会場はクーラーがよく効いている」 千秋楽は「ブルーの着物で観戦予定」と明かす
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
【衝撃の証拠写真】「DVを受けて体じゅうにアザ」「首に赤い締め跡」岡崎彩咲陽さんが白井秀征被告から受けていた“執拗な暴力”、「警察に殺されたも同然」と署名活動も《川崎・ストーカー殺人事件》
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《“ドバイ案件”疑惑のウクライナ美女》参加モデルがメディアに証言した“衝撃のパーティー内容”「頭皮を剥がされた」「パスポートを奪われ逃げ場がなく」
NEWSポストセブン
今はデジタルで描く漫画家も多くなった(イメージ)
《漫画家・三田紀房の告白》「カネが欲しい! だから僕は漫画を描いた」父親の借金1億円、来る日も来る日も借金を返すだけの地獄の先に掴んだもの
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
【伊東市・田久保市長が学歴詐称疑惑に “抗戦のかまえ” 】〈お遊びで卒業証書を作ってやった〉新たな告発を受け「除籍に関する事項を正式に調べる」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
《不動産投資会社レーサム元会長・注目の裁判始まる》違法薬物使用は「大きなストレスで…」と反省も女性に対する不同意性交致傷容疑は「やっていない」
NEWSポストセブン
女優・福田沙紀さんにデビューから現在のワークスタイルについてインタビュー
《いじめっ子役演じてブログに“私”を責める書き込み》女優・福田沙紀が明かしたトラウマ、誹謗中傷に強がった過去も「16歳の私は受け止められなかった」
NEWSポストセブン