国内

コンビニ店員が常連客の顔と名前覚えればさらに成長と大前氏

 コンビニエンスストアが繁盛している。セブン-イレブンの今年度の売り上げが、小売業で初めて3兆円を突破した。では、コンビニは今後も成長できるのか? 大前研一氏は、工夫次第でまだまだ伸びると指摘する。以下は、大前氏の指摘である。

 * * *
 現在のコンビニはコンピュータによる「棚管理」システムだから、限られた売れ筋商品しか置いていない。だが、少しリッチな単身者やDINKSのニーズは、実はコンビニだけでは満たすことができない。

 彼らは会社の帰りに駅近のデパ地下や駅ナカの食品スーパーなどで割高でも美味しい総菜を買い、重たい飲み物だけ自宅のそばのコンビニで買って帰るというライフスタイルになっている。
 
 だからデパートや総合スーパーの売り上げは減少しても、デパ地下や駅ナカ食品スーパーの売り上げは伸びているわけで、そのニーズをコンビニが取り込めばよいのである。
 
 つまり、コンビニはカタログ上の品揃えをデパ地下や食品スーパー並みに拡大し、ふだん店に置いてない生鮮食品や総菜は毎日、個々のお客さんから注文を受けて店内に保管しておき、お客さんの好きな時間に受け取ることができるようにするのだ。いわば個別宅配ボックスのような役割を担うのである。

 そうすれば、お客さんは、食品に限らず地元での買い物の大半がそのコンビニだけで間に合うようになる。コンビニ側もPCやスマホで頼まれた商品を用意しておけばよいのだから、限られた棚を24時間365日管理して商品を補充したり入れ替えたりする必要がなくなる。

 宅配スーパー事業を15年間やってきた私の経験からいえば、スーパーやコンビニが宅配に乗り出してもうまくいかない。お客さんは配達をサービスと見るので、経費倒れになるからだ。

 コンビニの商圏は半径500メートルといわれるが、このコンシェルジュ機能によって周りの競合コンビニチェーンと差別化を図り、500メートル圏内の約2000世帯のお客さんを個別に知るようになれば、たとえコンビニが飽和状態になっても売り上げを伸ばして生き残ることができるはずだ。

 ただし、その場合、店員の役割は今のレジ打ちと商品の陳列作業だけから高度化し、500メートル圏内の常連客の顔と名前を覚えて個別に柔軟に対応する“人材”に変えていかなければならない。

 したがって、マニュアル通りにしか対応できない若いアルバイトだけでなくシニアの常勤店員を置き、きめ細かく臨機応変な接客と顧客ニーズの吸い上げを行なうことが“成功のカギ”になるわけだ。

※週刊ポスト2012年2月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

財務省の「隠された不祥事リスト」を入手(時事通信フォト)
《スクープ公開》財務省「隠された不祥事リスト」入手 過去1年の間にも警察から遺失物を詐取しようとした大阪税関職員、神戸税関の職員はアワビを“密漁”、500万円貸付け受け「利益供与」で処分
週刊ポスト
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト