国内

原発近くの食堂 営業しない方が東電の補償多いが営業続ける

 かつて東京と仙台を結ぶ太平洋海岸側の幹線道路として国内屈指の交通量を誇っていた国道6号線。その南相馬側のほぼ境界線上に食堂を構えるのが「花園ドライブイン」だ。うどん400円、みそらーめん600円。かつては日本中の運転手が訪れ、一日700人は当たり前だったという。

 同店の二代目代表・石崎祐一氏が語る。

「この辺は他に店が開いてないから。今は地域の人に利用してもらってます。原発作業員の人は食事が弁当だから来ないけど、下請けの人は時折くる。最初の頃は軟禁状態で作業していて辛かったとこぼしてました。

 警察の人も大変だよね。24時間勤務で検問してるんだ。最初の頃はトイレもなくて外でやってたんだよ。可哀想だからうちを使ってくださいって。昼時なんかはけんちん汁を差し入れたりもした。そしたら県警の本部長が来て、感謝状とかもってくるからね、『いやいや、頑張ってるのはあなたたちだから。それよりもトイレもない所をなんとかしてやってくださいよ』と」

 店を再開したのは4月12日のことだった。営業時間は8~24時から11~15時に短縮。売り上げは以前の3割ほど。今年1月までで数百万円の赤字を抱える。

「何のために店をやってるのか……考えることもあります。この土地の評価額はゼロになった。東電の補償だって営業を完全に休んでゼロにしたほうが額は多い。でもね、それで仕事をしないのはやっぱりおかしいよ。店を移転させることも考えたけど、家族と話したらやっぱりここでやりたい、となった」

 その理由について尋ねた。すると石崎氏は強い口調でこういうのだった。

「だってまだ人は住んでるだろ。それに20km圏内の復興のためにも、この道に明かりを灯し続けないといけない。店とかやってないと、この先、人も戻ってこないからさ」

※週刊ポスト2012年3月9日号

関連キーワード

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン