国内

ネット右翼辞めた幹部 デマ真に受ける人たち見て怖くなった

 行動するネット右翼の「在特会」は、会員数1万1000人で、日本の右翼団体中最大の存在だ。彼らの生態とはどんなものなのか。『ネットと愛国~在特会の闇を追いかけて』の著者であり、彼らを「普通の人」と評するジャーナリストの安田浩一氏に、「ネット右翼のリアル」を聞いた。(取材・文=ノンフィクション・ライター神田憲行)

 * * * 
――安田さんはネット右翼団体「在日特権を許さない市民の会」(通称・在特会)について、「普通の人たちだ」とおっしゃいますが、普通の人がなぜ「中国人を殺せ」などと、激しい言葉をデモでたたきつけるのでしょうか。

安田:タブーを口にする快感みたいなのがあると思うんですよね。ネット右翼のデビューは「2ちゃんねる」で、そこに過激なことを書き込み、賛同してくれたレスに高揚感を持つ。

 在特会のネット会員になる、デモに実際に参加する、そしてそこでマイクを持つ……過激なことを言えば言うほど、「仲間」たちから肩を叩かれ、褒められる。やってるうちにだんだん、そういう仲間意識が心地よくなっていくんだと思うんですよ。

 在特会を辞めたある地方幹部に話を聞くと、彼は最初に新左翼系の団体とか渡り歩いていたんですよね。でもどうもしっくりこない。それで在特会のデモに参加して、「初めて社会の一員になれた気がした」と語っていました。

 新左翼系にいた人だから、在日に対する憎悪なんて最初はなにも無かった。ただ街頭に出て声を出していくなかで、彼の中に「正義」のようなものが芽生えてきて、だんだんそこに絡め取られていくんです。マイクを持って刺々しいシュピレヒコールを叫ぶことで、初めて他人に承認された感じるわけです。承認欲求、誰か自分を認めて欲しいという気持ちがネット右翼一般に通底している感情です。

 でもこれ、笑えないんですよね。今の日本社会で安定した雇用に付けて、恋人や家族がいて、友達も多くてという順風満帆な生活を送れている人がどのくらいいるでしょうか。私だって若い頃は貧しくて、孤独感にさいなまれていました。もし当時ネットがあって、在特会のような「受け皿」があったら、自分も一緒に拳を突き上げていたかもしれない。

――でもその人はなぜ在特会を辞めたんですか。

安田:本人曰く「アホらしくなったから」。たとえば東日本大震災で空き地になってしまった海岸線に中国人が大量に移植してくるというデマが掲示板に書かれているのを見て、会員たちが真剣に会話していたそうです。

 改めて否定するのもバカバカしいようなデマを真に受ける人たちを見て、「怖くなった」とも言ってました。ちなみに彼は在特会を辞めて、今は反原発運動の市民団体に参加しています(笑)。

――なにか新興宗教を次々と渡り歩く人に似ていますね。

安田:ええ。在特会に入る前は、毛皮反対運動や、チベット問題、教科書採択運動に参加していた人も少なくない。在特会の桜井会長にカリスマ性があるかは別にして、ロジックと言葉に力があることは認めざるを得ない。あと自分たちと異なる意見の持ち主に対して、やたらいきりたったり、攻撃的とかも宗教団体と重なるところがあります。

関連キーワード

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
来季米ツアー出場権を獲得した原英莉花(C)Yasuhiro JJ Tanabe
《未来の山下美夢有、竹田麗央を探せ》国内ツアーからQシリーズへの挑戦の動きも活発化、米ツアー本格参入で活躍が期待される「なでしこゴルファー」14人
週刊ポスト
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン
オリエンタルラジオの藤森慎吾
《オリラジ・藤森慎吾が結婚相手を披露》かつてはハイレグ姿でグラビアデビューの新妻、ふたりを結んだ「美ボディ」と「健康志向」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン