国内

笹川良平氏の息子 父の遺体の解剖に立ち会いその肉体に驚愕

 競艇による集金システムを築き上げ、“日本の首領”の汚名を背負った笹川良一と、彼を陰ながら支え、その遺志を継いだ三男・陽平に迫る週刊ポストの新連載『宿命の子』。作家の高山文彦氏が、良一氏の遺体解剖の様子を綴る。

 * * *
 良一の遺体は手際よくストレッチャーに移され、解剖室に運ばれた。人工のものか自然のものか定かではないが、大理石のような光沢を放つ石質の冷たく固い台の上に横たえられた。俎板の上のなんとやら、である。もうこの部屋にはいった時点から、毀誉褒貶を一身にあびてきた稀代の風雲児の遺体はブツにすぎなかった。医師は日野原重明・聖路加国際病院院長と主治医と、若い病理専門医の三人、あとは陽平がいるだけだ。

「では、はじめさせていただきます」と、主治医が言い、四人で合掌したあと、父は丸裸にされた。さすがに血の気は失せて真っ白だったが、小柄ながら若い頃は空手で鍛え、老いては八〇歳を過ぎてからジョギングをはじめた良一の体は筋肉質で、肩や胸のあたりが隆々と盛りあがっていた。ところが、陽平の目にどうしても飛び込んでくるのは、父の立派な陰茎なのだった。

「ああ、この人より先に死ななくてよかったなと、そのときまた思いましたね。あれはもう、芸術品ですよ。あれだけ外して、もって帰ろうかと思ったくらいに」

 と、陽平は笑う。胸の上部から臍のあたりにかけてまっすぐ一筋にメスがいれられ、つぎに臍から左右の脇腹に向かってメスがいれられた。まえの肉が観音開きに左右にひらかれて、白い肋骨があらわれた。肋骨の下部に医師が手をかけてもちあげようとすると、まるで床下収納の扉がぱっくりとひらくように両方の肋骨が顔に向かってほぼ垂直に立ちあがった。こうして隠れていた心臓や肺や胃袋などの内臓が、すべてあらわになった。人間がブツになりかわるこの変わり目の瞬間というものは、何度経験しても不思議な感情に包まれる。

「生きているときに頑張らないと、死んだら毎日が日曜日だぞ。おまえ、退屈するぞ」と、むかし聞いた父の声が陽平の耳によみがえってきた。

(連載『宿命の子』より抜粋・文中敬称略)

※週刊ポスト2012年5月4・11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《“七三分け”白髪の石橋貴明が動き始めた》鈴木保奈美「私がお仕事をしてこられたのは…」“再ブレイクと闘病中”元夫婦の距離感
NEWSポストセブン
波瑠と高杉真宙の仲睦まじいツーショット
《波瑠がメガネと白セーター姿で高杉真宙にピッタリ寄り添い…》「思い出深い1年でした」新婚ホヤホヤの2人は“お揃いのデニムパンツ”で笑顔の神対応
NEWSポストセブン
『激走戦隊カーレンジャー』でピンクレーサー・八神洋子役を演じ、高い人気を得た来栖あつこさん
《スーパー戦隊50年の歴史に幕》「時代に合ったヒーローがいればいい」来栖あつこが明かすイエローとの永遠の別れ、『激走戦隊カーレンジャー』ピンクレーサー役を熱演
NEWSポストセブン
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
《識者が“皇族の喫煙事情”に言及》「普段の生活でタバコを吸われる場合は…」秋篠宮さまの“車内モクモク”動画に飛び交う疑問
NEWSポストセブン
小室さん眞子さんのNY生活を支える人物が外務大臣表彰
《小室眞子さん“美術の仕事”の夢が再燃》元プリンセスの立場を生かせる部署も…“超ホワイト”なメトロポリタン美術館就職への道
NEWSポストセブン
今年成年式を終えられた悠仁さま(2025年9月、東京・港区。撮影/JMPA) 
《自らモップがけも…》悠仁さまが筑波大バドミントンサークルで「特別扱いされない」実情 「ひっさー」と呼ばれる“フラットな関係”
週刊ポスト
結婚を発表した長澤まさみ(時事通信フォト)
《トップ女優・長澤まさみの結婚相手は斎藤工と旧知の仲で…》インスタ全削除の“意味深タイミング”
NEWSポストセブン
長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「クマが人里に降りてくるのは必然」「農業は野生動物に対する壮大な餌付け」 知床・ロシアでヒグマを撮った動物写真家が語る “現代の人間に欠けている自然観”
NEWSポストセブン
11人家族の宮前家
《子ども9人“大家族のパン屋さん”》「店員さんが注文を覚えきれなくて(笑)」11人家族のインフレ“金銭事情”と、大人数子育てで培ったこと「マニュアル本は役に立たない」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン