ライフ

88才料理研究家 旬の香り伝える「天盛り」と「吸い口」を解説

 米寿を迎えたいまも、多数の料理教室の生徒をかかえ、テレビや雑誌に引っ張りだこの、“登紀子ばぁば”こと、料理研究家の鈴木登紀子さん(88才)。そんな鈴木さんが旬な香りを伝えてくれる「天盛り」と「吸い口」について話してくれた。これらは「たけのことうど、もんごういかの木の芽和え」「若竹椀」などで使われるもの。

 * * *
 旬の香りを伝えてくれる大切な脇役が、「天盛り」と「吸い口」。これらがありませんと、正式なお料理とはいえませんので、ぜひ知っておいてください。

 天盛りとは、和えものや煮ものの盛りつけの最後にのせる飾りをいいます。これがあることで「このお料理には、まだどなたもお箸をつけていませんよ」という証にもなります。日本料理ならではの心くばりですね。

 天盛りには必ず季節のものを使います。針しょうがや柚子、木の芽などが代表格で、木の芽和えにも、一葉の木の芽を添えました。

 吸いもののお椀に季節の香りを添えるのが吸い口。椀種は白身魚や貝などのたんぱく質のもの、椀妻は季節の野菜、これに吸い口を浮かべて正式なお椀となります。今回、若竹椀に浮かべた木の芽は春の吸い口にあたり、夏は青柚、秋~冬は黄色に熟した柚子などを使います。

 ちなみに「このめ」ではありませんよ。「きのめ」とお読みくださいね。また、木の芽ならなんでもよいわけではなく、お料理でいう木の芽とは、山椒の新芽だけを指します。

 天盛りや吸い口として使うときは、片手のひらにのせ、もう一方の手でポン!と軽くたたくと、香りがいっそうよくなります。

 季節のものがない端境期には、白髪ねぎ、粉山椒、針のりなどが重宝しますし、みそ汁には七味唐辛子や溶きがらしなどが使われます。

 お椀は熱々でお出しするのが鉄則。ぬるいお椀は香りも味わいも半減してしまいます。吸い口を添えましたら、ただちにお椀の蓋をして食卓に運びましょう。

 そしてお椀をいただく人は、運ばれてきたらすぐに蓋を取るのが礼儀です。蓋を取った瞬間に湯気とともにふわっとにおい立つ香りこそが、お椀の醍醐味なのですから。いつまでも放っておきますと、作った人の心が正しく伝わらないばかりか、蓋が取りにくくなったりすることがあります。どうぞ、いつも心にとめておいてくださいませ。

※女性セブン2012年5月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン