スポーツ

満員の武道館観衆は鉄の爪・エリックの右手1本に酔いしれた

 今年は新日本プロレスと全日本プロレスが旗揚げ40周年を迎え、昭和のプロレスが再び脚光を浴びている。ここでは、DVD付きマガジン『ジャイアント馬場 甦る16文キック』第1巻(小学館)より、1960~70年代にかけて日本中を震撼させた「鉄の爪」フリッツ・フォン・エリックの足跡を紹介しよう。

 * * *
 フリッツ・フォン・エリック、本名ジャック・アドキッセンは、13歳のときにドイツから米国テキサス州ダラスに移民、大学時代はアメリカン・フットボールの花形プレーヤーとして鳴らし、1954年にプロレス入り。
 
 デビュー当初は本名でファイトしていたが、スパン32センチの巨大な右手と、握力計の針を吹っ飛ばして推定130キロといわれ、軟式野球のボールを軽くパンクさせた驚異的な握力で、相手の顔面をわしづかみにする新技アイアン・クロー(鉄の爪)を開発、リングネームをドイツ風のF・V・エリックと改名して、一気に開花した。

 1962年1月には、バーン・ガニアからAWA世界王座を奪取、同王座を巡ってのガニアとの抗争は、AWAの黄金カードだった。

 その後、地元ダラスに『サウスウェスト・スポーツ』を設立、同地区の興行を一手に取り仕切る大ボスとなり、“ダラスの帝王”と呼ばれて、1975年8月には当時全盛のNWA会長に選任されている。ダラスでは、銀行やスーパーマーケットの大株主となり、自宅前の道路は「アドキッセン通り」と呼ばれるほどの名士だった。

 初来日は1966年11月の日本プロレスで、ジャイアント馬場のインター王座に大阪と東京で2度、挑戦して敗れているが、凄まじいばかりの人気だった。この1966年は、10月に東京プロレスが旗揚げ、アントニオ猪木が初来日のジョニー・バレンタインと名勝負を演じて話題となった。

 それまで一団体時代にあぐらをかき、招聘外人レスラーの人選も手抜き気味だった日プロが、東プロに対抗すべく打った手が、高額のギャラを奮発してのエリックの初来日と、「大きすぎる」と敬遠していた日本武道館のプロレス初使用だった。

 12月3日の日本武道館大会は超満員、5万余の観衆がエリックの右手1本の迫力に酔いしれた。エリックは、1人で日本武道館を満杯にした男なのである。エリックは、日プロには5回来日、1973年4月に崩壊した日プロの最後のシリーズ名は『アイアン・クロー・シリーズ』だった。

 エリックは1982年6月6日にダラスのテキサス・スタジアムで引退記念試合を行い、キングコング・バンディからアメリカン・ヘビー級王座を奪取、1951歳で男の花道を飾った。

 エリックには6人の息子がいたが、長男は幼いときに感電死し、「5人の世界チャンピオンを生む」ことを夢としてプロレス入りさせた。その夢は四男ケリーだけがNWA世界王者となり果たしたが、現在は次男ケビンを除く全員が変死を遂げ、“呪われたエリック一家”といわれている。なおケビンの息子であるロスとマーシャルは現在、日本のノアで修業中だ。

※DVD付きマガジン『ジャイアント馬場 甦る16文キック』第1巻(小学館)より

関連記事

トピックス

決死の議会解散となった田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
「市長派が7人受からないとチェックメイト」決死の議会解散で伊東市長・田久保氏が狙う“生き残りルート” 一部の支援者は”田久保離れ”「『参政党に相談しよう』と言い出す人も」
NEWSポストセブン
石橋貴明の現在(2025年8月)
《ホッソリ姿の現在》石橋貴明(63)が前向きにがん闘病…『細かすぎて』放送見送りのウラで周囲が感じた“復帰意欲”
NEWSポストセブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
「ずっと覚えているんだろうなって…」坂口健太郎と熱愛発覚の永野芽郁、かつて匂わせていた“ゼロ距離”ムーブ
NEWSポストセブン
新潟県小千谷市を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA) 
《初めての新潟でスマイル》愛子さま、新潟県中越地震の被災地を訪問 癒やしの笑顔で住民と交流、熱心に防災を学ぶお姿も 
女性セブン
羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ騒動が起きていた(写真/アフロ)
【スクープ】羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ告発騒動 “恩人”による公演スタッフへの“強い当たり”が問題に 主催する日テレが調査を実施 
女性セブン
自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏》政治と距離を置いてきた妻・滝川クリステルの変化、服装に込められた“首相夫人”への思い 
女性セブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《初共演で懐いて》坂口健太郎と永野芽郁、ふたりで“グラスを重ねた夜”に…「めい」「けん兄」と呼び合う関係に見られた変化
NEWSポストセブン
千葉県警察本部庁舎(時事通信フォト)
刑務所内で同部屋の受刑者を殺害した無期懲役囚 有罪判決受けた性的暴行事件で練っていた“おぞましい計画”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《「父子相伝がない」の指摘》悠仁さまはいつ「天皇」になる準備を始めるのか…大学でサークル活動を謳歌するなか「皇位継承者としての自覚が強まるかは疑問」の声も
週刊ポスト
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《「めい〜!」と親しげに呼びかけて》坂口健太郎に一般女性との同棲報道も、同時期に永野芽郁との“極秘”イベント参加「親密な関係性があった」
NEWSポストセブン
2泊3日の日程で新潟県を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA)
《雅子さまが23年前に使用されたバッグも》愛子さま、新潟県のご公務で披露した“母親譲り”コーデ 小物使い、オールホワイトコーデなども
NEWSポストセブン
すべり台で水着…ニコニコの板野友(Youtubeより)
【すべり台で水着…ニコニコの板野友美】話題の自宅巨大プールのお値段 取り扱い業者は「あくまでお子さま用なので…」 子どもと過ごす“ともちん”の幸せライフ
NEWSポストセブン