国内

指名手配犯追う見当たり捜査官 500人以上の顔を頭に入れる

 2011年の凶悪犯検挙率は75.5%。凶悪犯4人に1人は検挙に至らず逃亡している計算だ。

 これに対し、警察も手をこまねいているわけではない。長期未解決事件解決の専従班が各都道府県で設置したほか、警視庁では、情報分析や画像を解析する捜査支援分析センターを設立。プロファイリングなどFBI並の科学捜査に力を入れている。

 そうした日進月歩の科学捜査の一方で、その対極にある捜査方法が力を発揮している。それが1978年に大阪府警が初めて組織的に始めた「見当たり捜査」である。

 ごく簡単に記せば、指名手配犯の顔写真を捜査員が記憶し、繁華街などの雑踏の中などで手配犯を見つけ出すという捜査方法だ。これまでに逮捕した被疑者は3613人にのぼり、平均すると年間約100人。これは大阪で逮捕される指名手配犯の約2割に相当するというから、抜群の捜査実績である。

「見当たり捜査班」は大阪府警では刑事部捜査共助課に属するが、人数や詳しい組織構成は公表されていない。そこで、この道20数年というベテラン捜査員の元を訪ねた。

「指名手配されている被疑者のなかには家族の元や故郷にも帰らず、まったくどこにいるのかわからない蒸発系被疑者がいる。彼らの写真を見て覚え、例えばミナミとか梅田とか人込みの多い繁華街などに立ち、見かけたら即逮捕する。そのため、雪が降るような寒い日も気温が37度、38度にもなる真夏の日でも捜査員は街角に立ってひたすら犯人を待ち続けるわけです」

 捜査員は指名手配犯らの写真を500人以上も頭に叩き込んでいるという。手配写真は古いものもあり、その後太ったり痩せたり、髪形が変わったり、なかには変装、整形しているケースもある。それでも見極めてしまうポイントはどこにあるのか――。ベテラン捜査員はこう話す。

「基本的には目です。じっと写真を見ていると、目は指紋と一緒で個人差が絶対にある。白目と黒目の比重とか。目元の印象とか。どんなに髪形や服装を変えたり、年齢を重ねたりしても目だけは変わらない」

 2年前のことだが、大阪市内の繁華街にあるゲームセンターで、見当たり捜査員が1人の男の姿をした人物を逮捕した。ガッチリした体格で頭はスポーツ刈り。ジャンパーを羽織って、肩をいからせながら歩く。外見上はどう見ても男だが、実は2年前に窃盗容疑で兵庫県警に指名手配されていた30歳の女だったのだ。

「7年前に撮影されたという手配写真はどこから見ても可愛らしい女性。容姿はすっかり変わっていたけれども、捜査員は“目の雰囲気が一緒や”と確信したそうです」(同)
 
※週刊ポスト2012年6月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト