国際情報

戦時に未払いだ! 韓国徴用工補償問題、韓国政府に要求が吉

 国際法的には解決している問題を、国内裁判で勝手に裁き直す――法治国家とは思えないお粗末な法廷が隣国でまかり通っている。大マスコミが報じない日韓の大問題を、産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏が緊急レポートする。

 * * *
 先月、韓国の最高裁は、戦時中に韓国人(朝鮮人)を労働者として使った日本企業に対して、元労働者たちが未払い賃金などを個人補償要求することを認める判決を出した。

 韓国人労働者は、戦時中の国民総動員下で日本に渡航・就労し“徴用工”といわれた。そして、戦後は受け取っていなかった賃金などの支払いを求め、訴訟を繰り返してきた。

 過去、日韓の裁判所は「補償問題は国交正常化の際の協定で終わっている」とし、個人の補償要求は認めなかった。だが今回は、韓国の最高裁が「個人の(日本企業への)補償請求権はある」として補償裁判のやり直しを命じたのだ。

 慰安婦問題でもそうだが、韓国では「日本はひどいことをした!」というイメージを強調するため、日本統治時代のことはすべて「強制」だったとする「強制史観」が定着している。徴用工もすべて「強制労働」という。そこでは自らの動機や家庭の事情などまったく無視される。今回、新日本製鉄相手の原告の一人(89歳)は、韓国マスコミとのインタビューで当時の日本渡航のきっかけをこう語っている。
 
「20歳になった1943年9月、月給もたくさんやる勉強もさせてやるという日本の新聞の虚偽広告を見て、2年契約で海を渡り大阪に行った。家が貧しく散髪屋の手伝いでは稼ぎがなくて(以下略)」
 
 終戦は北朝鮮の清津にあった分工場で迎えた。契約満了後もらうことになっていた賃金がそのままになったというのだ。

 訴訟の原告が当時、日本企業で働くきっかけを「新聞広告を見て応募した」と語っているのに、マスコミが「企業による強制徴用」と強調することに疑問はあるものの、確かに彼らには補償を求める権利はある。日本の銀行や郵便局にあずけた預貯金を受け取れなかった人もいたからだ。

 問題は、個人補償を誰に求めるかだ。

 一言でいえば、徴用工でも慰安婦でも、補償問題は韓国政府に要求すれば解決する。なぜなら1965年の国交正常化の際、すべての補償は韓国政府が一括して受け取り、個人補償は韓国政府が代わって行なうことで双方が合意しているからだ。この際、韓国政府がまとめて日本から請求権資金(5億ドル)として受け取っている。

 交渉過程では、日本側がむしろ個人補償案を主張し、韓国側はそれを断わったことが外交文書に記録されている。後日、さまざまな理由をつけて新たな要求が出てくる可能性があるため締結した「請求権協定」には、これで補償問題は「完全かつ最終的に解決」したと明記されているのだ。

 にもかかわらず韓国で日本への補償要求が続いてきたのは、韓国政府およびマスコミがこの事実を意図的に無視し、隠してきた(?)からだ。

 韓国では日韓国交正常化以降、「日本は何も償っていない!」という虚偽キャンペーンが続いた。「日本を許したくない」からだ。そのことによって韓国人は元気が出るし、日本からさらに利益を引き出せる。

 しかし韓国は国交正常化の際、日本から得た5億ドルの「請求権資金」と「経済支援」で、現在の発展の基礎を築いた。世界が認めるこの事実を、韓国はいまだ表向き認めたがらない。

 ただし今回は、日本からの資金でスタートあるいは成長した韓国企業が基金を出す「補償財団」創設の動きが出ている。個人補償は韓国側で面倒を見る――これが“正論”である。韓国で世論を含めこの原則が確立されれば、日本の方でも政府あるいは企業が「それなら」と、人道的配慮で何らかの新たな協力ができるかもしれない。

※週刊ポスト2012年6月29日号

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン