気象庁の予報では今年の夏の気温は平年並みで、去年ほどの猛暑の可能性は低いという。だが、妻たちは熱気ムンムンの「節電熱」を放射している。呆れ顔で話すのは、ホテル業界に勤務するA氏(48歳)だ。
「この前、遅番勤務を終えて深夜に家に帰ったら、玄関灯が点いてなくて、家の前が真っ暗。危うくプランターにつまずいて転ぶところでしたよ。女房に聞いたら、節電のために契約アンペアを60Aから30Aに変更したから、もう玄関灯は使えないわよって」
電気代の基本料金は、60Aだと月1638円だが、30Aだと月819円。東京電力にはアンペアダウンの問い合わせが殺到しているらしい。実際、東電のHPには「現在ご契約アンペアの変更についての申込みが集中し、当社アンペアブレーカーの在庫が不足しております」と書かれているのだ。
節電に詳しい神奈川工科大学准教授の矢田直之氏が話す。
「今、4人以上の家族向け新築物件の場合、一戸建てでもマンションでも60Aに設定されていることが多いのですが、一般的にこれは大きすぎます。しかし、一気に30Aに落とすと不便を感じるでしょう。30Aということは、一時に使用できる電気の上限が3000Wということですが、電子レンジは900W、ドライヤーは1000~1500W、IH調理器に至っては2000Wぐらい食います。油断してそれらを同時に使うと、ブレーカーが落ちてしまいますから」
それを避けようとすると、冒頭のA氏のような体験は冗談ではなくなる。
※週刊ポスト2012年7月6日号
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